治療を受ける前に知っておきたいこと
医療者とともに治療を
決める共同意思決定
(SDM : Shared Decision Making)
日本赤十字社医療センター 血液内科
部長 塚田 信弘 先生
医療者と一緒に考えていきましょう
治療法の選び方は、そのときの病状や期待できる効果だけでなく、副作用や通院頻度、仕事や家庭との両立など、日々の生活への影響も含めて考えることが大切です。治療の目的や見通し、選択肢のメリット・デメリットを医療者と一緒に整理し、価値観や希望をふまえて患者さんと医療者が一緒に納得できる治療方針を決めていく考え方を共同意思決定(SDM:Shared Decision Making)1)といいます。
SDMでは、患者さんの希望や大切にしたいことをもとに、医療者と一緒に治療を考えます。 ご自身で納得して治療を選ぶことで、前向きに治療に取り組むことができ、薬をきちんと使うことにもつながります2)。
SDMの進め方3,4)
治療について、いくつかの選択肢が考えられることがあります。まずは自分も一緒に考えていく立場であることを理解し、不安や疑問、優先したいことを医療者に伝えることが大切です。
それぞれの選択肢について、効果や副作用、生活への影響などをよく理解し、自分にとって何が大切かを考えながら比較します。わからないことはそのままにせず、納得できるまで確認しましょう。
そのうえで、自分の価値観や生活に合う選択肢を、医療者や家族と相談しながら考えていきます。すぐに決める必要はなく、自分が納得できるものを選ぶことが大切です。
診察でよくある会話例
〇〇さんの場合だと、治療としては
AやBといった選択肢があります。
専門的なことは分からないので
すべて先生におまかせします。
この会話では、患者さんが医師に判断をゆだねる意向を伝えています。
もしも患者さんが治療についての希望を医師に伝えることができたら、次の会話例のように納得のいく治療を受けることにつながるかもしれません。
SDMは繰り返すことが大切です
SDMは一度で終わるものではありません5)。治療を始めてからも、患者さんの状態や気持ちの変化に合わせて繰り返し行います。
少しでも気になることがあれば、身近な医療者に相談してみましょう。
SDMのためのチェックリスト
このチェックリストは、診察時にご自身の希望や病気・治療についての理解を医療者に伝えるためのものです。
PDFをダウンロードして、受診時の相談にご活用ください。
治療に対する希望を整理するためのチェックリスト
病気や治療についての
理解度チェックリスト
国立がん研究センター「がんになったら手にとるガイド」および別冊付録「わたしの療養手帳」を参照して作成
情報とのつきあい方
〜誤情報に注意しましょう〜
SNSやブログなどにはがんに関する体験談や励ましの声が多く寄せられ、心の支えになることがあります。
ただ、科学的な根拠がない情報も少なくありません。
たとえば、サプリメントや特定の食事法、マッサージなどのいわゆる「民間療法」は、がんそのものへの効果が証明されていません7)。根拠がないまま標準治療(科学的根拠に基づいた現在受けられる最善の治療)8)をやめてしまうと、治療の機会を逃す可能性があります。
不安を感じるときこそ、正確な情報が頼りになります。困ったときや迷ったときはひとりで抱え込まず、医療者や信頼できる窓口に相談しましょう。
信頼できる情報源と相談窓口
正確な情報を得るために、信頼できる情報源を積極的に活用しましょう。
下記のがん相談支援センターなどでは、治療や療養生活、利用できる制度・サービス、今の気持ちや不安・心配ごとなど、さまざまな悩みについて相談できます。患者さんご本人はもちろん、ご家族の方からの相談も可能です。
また、その医療機関に通っていなくても利用することができます。
このような機関を上手に利用しながら、少しずつ病気と向き合っていきましょう。
がん相談支援センター
全国のがん診療連携拠点病院などに設置されており、無料・匿名で利用できます。 がんに詳しい看護師や、生活全般の相談に対応できるソーシャルワーカーなどが相談員として対応しています。 運営時間は、設置されている病院によって異なります。お近くの支援センターは、下記サイトまたはお電話でご確認いただけます。
国立がん研究センターがん情報サービスのサイトから探す https://hospdb.ganjoho.jp/kyoten/soudansearch
国立がん研究センターがん情報サービスサポートセンターへ電話で問い合わせる
受付時間:平日 10:00〜15:00(土日祝日、年末年始を除く)
電話番号:0570-02-3410(ナビダイヤル)/03-6706-7797
がん相談ホットライン(電話相談)【日本対がん協会】
公益財団法人日本対がん協会が運営しており、がんに関する不安や心配がある方ならどなたでも無料・匿名で利用できます。看護師や社会福祉士が対応しています。(秘密厳守、概ね20分)
受付時間:年末年始を除く毎日 10:00~13:00/15:00~18:00
電話番号:03-3541-7830(予約不要)
相談受付日時は変更になる場合があります。最新の情報は日本対がん協会のサイトでご確認ください。
https://www.jcancer.jp/activity/consultation-life/
がんチャット相談(オンライン相談)【国立がん研究センターがん情報サービスサポートセンター】
国立がん研究センターがん対策研究所が運営する相談窓口です。がんに関する心配事や知りたい情報を登録不要、匿名で相談できます。がん相談の教育・研修を受けた看護師、心理士など国家資格を持つ相談員が対応しています。(原則20分以内)
受付時間:平日 12:00~15:00(土日祝日、年末年始を除く)
ご利用方法・詳細は、がん情報サービスサポートセンターのご案内ページよりご確認ください。
https://ganjoho.jp/public/institution/consultation/support_center/guide.html
・相談員は医師ではありませんので、医学的判断を要するご質問にはお応えできません。
・診断書などの個人情報は受け取ることができません。
・ご相談が2回目以上の場合、過去のご相談内容を確認した上で対応可能です。
・相談のやり取りや内容が分かるものは、個人的な利用を除き、SNS等での公開・共有はご遠慮ください。
参考文献
1)一般社団法人 日本医療安全学会 医療安全用語集「共同意思決定」https://www.jpscs.org/?p=1710 (accessed Jun. 25, 2026)
2) Minds ガイドラインライブラリ 重要用語の基礎知識「2.SDM(Shared Decision Making)」
https://minds.jcqhc.or.jp/cpg/about-cpg/basic_terms/ (accessed Jun. 25, 2026)
3) Elwyn G, et al. A three-talk model for shared decision making: multistage consultation process. BMJ 2017; 359: j4891.
https://www.bmj.com/content/359/bmj.j4891 (accessed Jun. 25, 2026)
4) 石川ひろの. Shared Decision Makingの可能性と課題. 医療と社会. 2020年30巻1号p.77-89.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/iken/30/1/30_30-77/_pdf (accessed Jun. 25, 2026)
5)National Institute for Health and Care Excellence.
Shared decision making. NICE guideline NG197. 2021.
https://www.nice.org.uk/guidance/ng197 (accessed Jun. 25, 2026)
6)国立がん研究センターがん情報サービス
研究段階の医療(臨床試験、治験など)のQ&A:基礎知識 「Q1 臨床試験とは何ですか?」
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/clinical_trial/ct_qa01.html#qa179 (accessed Jun. 25, 2026)
7) 国立がん研究センターがん情報サービス
がんと民間療法(健康食品・サプリメント・食事療法を中心に)
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/cam/health_food_products.html (accessed Jun. 25, 2026)
8)国立がん研究センターがん情報サービス
がんに関する用語集 「標準治療(ひょうじゅんちりょう)」
https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/index.html#anchor6 (accessed Jun. 25, 2026)