医療が進歩した今も、世界には治療法のない病気や、患者さんの負担が大きい疾患が数多く残されています。そうした課題解決に挑むため、Meiji Seika ファルマはグローバルでさまざまな取り組みを進めています。
新たにスタートする本連載「Beyond Borders」では海外事業をクローズアップ。取り組みの内容を、社員たちの想いとあわせて紹介していきます。
第1回では、創薬の最前線、アメリカのボストンで、ベンチャー企業と手を組み次世代の新薬創出を目指す駐在員たちに話を聞きました。
高畑 祥
Meiji Pharma USA Inc.
Venture Investment, Senior Director
西山 明香里
Meiji Pharma USA Inc.
Venture Investment, Manager
東 徹
Meiji Pharma USA Inc.
Venture Investment, Associate Manager
目次
新薬の「原石」を見いだすため、ボストンへ
人々の健康に貢献する新薬を生み出すため、Meiji Seika ファルマは、感染症、血液、免疫炎症という3つをとして研究開発を行ってきました。近年は、同じ明治グループのKMバイオロジクスや、大学、研究機関など外部パートナーとの連携を強化し、積極的にオープンイノベーションを進めています。
そうした背景には、創薬を取り巻く環境の変化があります。新薬の研究開発には、最先端の科学・技術と長い年月、大きな投資が必要です。さらに近年は、創薬の技術やアプローチが高度化・多様化し、研究領域はますます専門化しています。その結果、かつてのように一社だけで基礎研究から臨床開発、製造、販売までを完結させるビジネスモデルでは、スピードも成果も十分に確保できない時代になっているのです。
「新薬を生み出すには、優れた技術や知見を持つ大学やベンチャー企業と力を合わせることが不可欠です。そのためには、サイエンスの最先端の地に根を張る必要があると考えました」
そう語るのは、2024年8月に設立されたボストンオフィスの代表、高畑です。
ボストンは、大学や研究機関、バイオテック企業、スタートアップ、投資家が集まる世界有数の創薬都市。ここから次世代の医薬品が次々と生まれています。
「Meiji Seika ファルマは、革新的な治療薬や予防薬を一日も早く患者さんや医療現場に届けることを目指しています。そのためには、いち早く新薬の『原石』を見いだすことが重要です。原石を持つベンチャー企業に投資し革新的な技術に育てることで、私たちのイノベーションを加速させる。それがボストンオフィスのミッションです」(高畑)
ボストンオフィスの役割
ベンチャー企業との連携で「新薬」を育て、社会に
ボストンオフィスでは、高畑のほか西山と東がベンチャー企業への投資を担当。3人は日々、現地のベンチャー企業やスタートアップなどと対話を重ねています。技術を見極め、将来の共同研究や事業化の可能性を探りながら、ともに成長するパートナーを見つけるためです。
西山は、「各社と議論していると、リスクを恐れず挑戦する起業家精神や、意思決定の速さ、創薬都市ボストンならではの『スタートアップを支える環境』などに圧倒されます。私自身、とても刺激を受けています」と語ります。
ボストンの最新情報はもちろん、スタートアップを育てる文化やイノベーションを起こす仕組みを、日本の本社に共有することも重要な役割です。
ここで吸収した知見は、meijiの創薬にとどまらず、日本の創薬を次のステージへ進展させる一歩にもなると思っています。(西山)
東も強い決意を語ります。
「未解決の医療課題に挑むベンチャー企業とタッグを組むことで、研究段階にある技術を新薬に育て、世の中に送り出したい。その橋渡し役になりたいと思っています」(東)
感染症の世界的な課題を解決するために
2025年、ボストンオフィスは、2つの大きな投資をスタートさせました。
一つは、感染症領域での取り組みです。戦略的パートナーとなったのは、世界的なバイオ投資会社、MPM BioImpact。感染症を投資スコープとするファンドを設立し、革新的技術を持つベンチャー企業への投資を強化しています。
感染症領域には、従来の抗菌薬が効かない薬剤耐性菌の増加や、未知のウイルスによる感染症のリスクなど、解決すべき問題が山積しています。
70年以上にわたり感染症に向き合ってきた企業として、世界が直面するこうした重大な課題に挑みたい。(高畑)
それがMPM BioImpactをパートナーに選んだ理由だと言います。
「MPM BioImpactの感染症領域を重視する戦略に加え、ベンチャー企業の技術をしっかりと評価するサイエンス重視の姿勢も、私たちと一致しました。同社を通して有望なベンチャー企業を支援することで、次世代の治療薬・予防薬を生み出したいと考えています」(高畑)
重要な治療薬の供給不足の解決を目指して
もう一つは、血液領域での取り組みです。次世代バイオ製造技術の研究開発を行うベンチャー企業、Lyric Bioに出資し、技術開発の支援を開始したのです。
明治グループでは、KMバイオロジクスの前身である化学及血清療法研究所(化血研)の時代から血漿分画製剤の開発・製造に取り組んできました。血漿分画製剤は健康な人が献血した血液からつくられる医薬品であり、現在はKMバイオロジクスが製造を、Meiji Seika ファルマが販売を担っています。
その血漿分画製剤の一つ、免疫グロブリン製剤は、免疫不全や自己免疫疾患など、幅広い疾患で使用される重要な治療薬。しかし製造は献血に依存しているため、世界的に供給不足が課題となっています。
現在の製法では、患者さん1回分の製剤に7~10人分の献血が必要とされています。そうしたなか、出資先のLyric Bioは組織工学技術を活用し、1人分の献血から1,000回分の製剤を生み出す革新的技術を開発中です。
東は、Lyric Bioを支援する理由をこう話します。
「世界の医療に貢献する『ゲームチェンジャー』になりうる技術を持っています。実用化できれば、供給不足という構造的な課題を抜本的に解決できる可能性があります」
必要な治療薬を、多くの患者さんに安定的に届けられる未来をつくりたい。(東)
全米バイオ産業協会が主催するバイオテック企業・投資家・製薬メーカーのマッチングイベントに参加するほか、アメリカ血液学会(ASH)が主催するチャリティマラソンに参加するなど、多様な企業・団体と交流し、現地でのネットワークを広げています。
meijiのDNAで、グローバル水準のイノベーションを
ボストンオフィスでは現在、年間数百社にのぼる企業の情報を収集し、対話を重ねながら連携の可能性を探っています。その一つひとつの出会いが、未来の新薬につながるかもしれない――。そんな思いが3人の原動力です。
高畑が大切にしているのは「共創」の姿勢です。
「ベンチャー企業への投資は、資金を提供して終わりではありません。どうすればその技術や企業価値を最大化できるのか。どのようにすれば医療課題の解決へと最短距離でつなげられるのか。私たちはパートナーとして共に考え、共に挑戦する存在でありたいと思っています」
地道にネットワークを築いてきた今、現地での認知度も高まってきました。
「技術革新に挑むベンチャー企業から、『meijiと組みたい』『meijiに出資してほしい』と選ばれる存在になりたいと思っています」(高畑)
西山は、明治グループの原点に目を向けます。
「1946年、明治グループは日本でいち早くペニシリンの製造・研究に取り組み、感染症治療に革新をもたらしました。そのパイオニア精神のDNAをもとに、今度はグローバル水準でのイノベーションを起こしたい。そのきっかけをつくるために挑戦を続けていきます」
3人の想いは一つです。
これまでにない革新的な治療薬や予防薬をつくり、必要とする患者さんと医療現場へ届けたい。
その実現のために、これからもベンチャー企業との共創を通じて、Meiji Seika ファルマの創薬イノベーションを加速させていきます。