治療に役立つ薬を一人でも多くの患者さんに届けたい──。その使命感のもと、長年、海外でも事業を行っているMeiji Seika ファルマ。2024年には台湾で新たな挑戦をスタートしました。
国境を越える挑戦を描く「Beyond Borders」シリーズの第2回となる今回は、台湾でゼロから事業を立ち上げ、最前線で奮闘するメンバーにスポットを当てます。彼らを突き動かす原動力は何か。その背景にある、ひたむきな想いをたどります。

美作 健太郎

台湾明治医薬股份有限公司
総経理

Anne Chang

台湾明治医薬股份有限公司
メディカルアフェアーズ担当

目次

  1. 1待っている患者さんがいる。その現実が、台湾での挑戦を後押しした
  2. 2「次に打つ手がない」という切実な声に応える、慢性GVHD治療薬
  3. 3「日常が少しずつ変わっていった」。患者さんや医師の喜びの声
  4. 4台湾特有の課題に立ち向かい、命と健康の選択肢を広げる
  5. 5「meiji」だからできること。アジアへ、世界へ

待っている患者さんがいる。その現実が、台湾での挑戦を後押しした

Meiji Seika ファルマは、1950年に抗菌薬「ペニシリン」の輸出を開始して以来、長年にわたり世界各地の医療現場と向き合い、抗菌薬やワクチンをはじめ、医療課題の解決につながる医薬品を届けてきました。
そして今、「アジアにおける感染症領域のリーディングカンパニーになる」という次なる目標を掲げ、歩みを進めています。その大きな一歩として、2024年に台湾に新たな拠点を設立しました。

「台湾はアジアで有数の医薬品市場であり、同時に、新しい薬を待っている患者さんが多くいる地域でもあります。この地で私たちだからこそできる貢献をしたい。その強い気持ちが、台湾進出への挑戦を後押ししました」と、美作は語ります。

とはいえ、医療制度も文化も日本とは異なる土地。会社をゼロから立ち上げる道のりは、決して平坦ではありませんでした。
Meiji Seika ファルマが培ってきた知見を結集することはもちろん、何より大きな推進力となったのは、台湾の医療現場に精通した現地のスタッフたちです。
「医薬品を届けるためには、さまざまな手続きが必要です。当初、その壁にぶつかりかけていたのですが、Anneさんをはじめとした現地スタッフが専門知識や経験を活かして並走してくれたおかげで、ビジネスをスタートすることができました」
同じ志を持つ現地スタッフたちと手を取り合うことで、新会社は力強い一歩を踏み出したのです。

国内営業や国際事業でのマーケティングを経て台湾へ。会社設立、現地法人の基盤づくりと事業展開という自身初の挑戦に全力で取り組んでいます。

「次に打つ手がない」という切実な声に応える、慢性GVHD治療薬

台湾明治医薬が最初に発売したのは、の新しい治療薬です。慢性GVHDとは、血液のがんを治療するために行われる造血幹細胞移植の後に起こる、難治性の合併症。皮膚や口・眼、肺、消化器など全身にさまざまな症状を引き起こし、患者さんとその家族の日常生活に大きな苦痛と悪影響を及ぼします。
慢性GVHDの治療には、一次治療としてステロイドなどが用いられますが、十分な効果が得られない患者さんも少なくなく、多くのアンメット・メディカルニーズ(現在の医療技術や薬剤では十分に対応できていない未解決の医療ニーズ)が存在しています。

台湾においても、慢性GVHDの治療に有効な治療薬が限られているため、効果が出なかった患者さんに対して「次の選択肢がない」という厳しい状況があります。
「私たちの新しい治療薬で、患者さんとその家族をサポートしたいという想いが強くありました。『meiji』ブランドは食品や粉ミルクを通じて台湾でも広く知られているものの、医薬品事業を担い、始動したばかりの台湾明治医薬の認知度はまだほとんどありません。ですから、私たちの会社が何を目指し、どんな強みを持っているかを広く知ってもらう活動を、スタッフと一緒に地道に積み重ねています」

台湾各地の病院に足を運んで医療関係者一人ひとりと対話するほか、各地の学会に展示ブースを設けたり、学会とシンポジウムを開いて慢性GVHDの最新の治療について意見交換をしたり──。信頼関係を構築するために、コミュニケーションを積極的に続けています。

「日常が少しずつ変わっていった」。患者さんや医師の喜びの声

地道な活動を続けるうち、医療現場から反響が得られるようになってきました。
「私たちの治療薬を使ったドクターが、生き生きとした表情で喜びと期待を話してくださったことが印象に残っています。慢性GVHDの新しい治療薬がこれほどまでに求められていたんだと、胸が熱くなりました」

ドクターとのコミュニケーションをリードするAnneも続けます。
「あるドクターは、患者さんが元気になった様子を教えてくれました。辛さを抱えながら過ごしていた日常が少しずつ変わり、あきらめていた仕事にも復帰できたそうです。この話を聞いたとき、私たちの仕事はただ薬を届けるだけではないのだと、気づきました」

患者さんが自分らしい生活を取り戻すきっかけをつくり出せることに、言葉にできないほどのやりがいを感じています。(Anne)

製薬業界で10年以上の経験を経て入社。「革新的な治療薬を届け、患者さんの人生に貢献したい」という想いを胸に、台湾の医療現場と向き合っています。

台湾特有の課題に立ち向かい、命と健康の選択肢を広げる

一方で、美作は台湾特有の課題も感じていると言います。それは、日本とは異なる医療制度の仕組みです。
「ほぼすべての新薬が健康保険の適用対象となる日本とは異なり、台湾では、新薬が健康保険の適用対象になるまでに長い時間がかかったり、対象となる患者さんが制限されたりすることが多くあります。そのため、患者さん本人が薬剤費の全額を自己負担しなければ新薬を使用できないケースが多く発生してしまうのです」

台湾明治医薬の慢性GVHDの治療薬も、現時点では健康保険の適用対象外です。
「新しい治療薬が目の前にあるのに、経済的な理由でその使用をあきらめざるをえない。この厳しい状況を少しでも変えようと、私たちは行政に働きかけたり、経済的負担を軽減する患者支援策を実行したりすることにも注力しています。必要とする患者さんに治療薬を届けることが私たちの使命ですから」

課題はこれだけではありません。台湾は医薬品の多くを輸入に頼っており、海外ではよく使われている医薬品が台湾では承認されていない「ドラッグ・ロス」や、承認されるまでに時間がかかる「ドラッグ・ラグ」といった問題があるのです。

「医療のあらゆる場面で命を支える抗菌薬についても、ドラッグ・ロス、ドラッグ・ラグが発生しています。Meiji Seika ファルマが強みとする抗菌薬のラインアップを届けることができれば、課題解決に貢献できると思っています」

メディカル担当やセールス担当、事務担当らスタッフたちと打ち合わせ

「meiji」だからできること。アジアへ、世界へ

今、台湾明治医薬は次の未来を見据えています。

「台湾で長く医療現場を支える存在になれるよう、慢性GVHDの治療薬を通して医療現場や患者さんと信頼関係を築くことが第一です。それを揺るぎない土台として、抗菌薬やワクチンなど、第二、第三の医薬品販売へとつなげ、台湾の医療により深く、広く貢献していきたいと考えています」

懸命に挑み続けるのは、医薬品を必要とする人がいるからだとAnneは言います。
「革新的な治療薬を台湾の患者さんに届けるチャンスに巡り合えたこと。そして、医療関係者と連携しながら、患者さんの人生に光を届けられること。それこそが、私の揺るぎないモチベーションです」

台湾での事業立ち上げで得た知見やノウハウは、2026年4月に新設されたシンガポール拠点など、今後のアジア圏でのさらなる事業展開に向けてMeiji Seika ファルマグループ全体へ共有され、活かされていきます。また、タイやインドネシア、日本など、同じ治療薬を販売するグループ会社とも情報交換をしながらワンチームで動いています。

「アンメット・メディカルニーズの解消や、ドラッグ・ロス、ドラッグ・ラグといった課題は、台湾だけのものではありません。同じ問題を抱える国や地域は世界に多くあります。だからこそ、Meiji Seika ファルマのグループ各社が国・地域を越えて協力しながら解決の道を探っていくことに大きな意味があるのです。先日、ある台湾の方から『どの国・地域も、すべての医療課題を自分たちだけで解決することは不可能であり、医療課題の解決には国際的な協力が必要不可欠。meijiは重要なパートナー』という言葉をいただきました」

私たちの台湾での挑戦を、もっと広くアジアの患者さんの笑顔につなげていきたい。(美作)

Meiji Seika ファルマの「Beyond Borders(国境を越えて)」の挑戦は、これからも世界中の患者さんの健やかな毎日のために続いていきます。