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Meiji Seika ファルマは2023年11月、次世代mRNAワクチン(レプリコン)の製造販売承認を世界で初めて取得しました。承認を受けたのは、新型コロナウイルス感染症に対する次世代mRNAワクチンの日本国内における製造販売についてです。次世代mRNAワクチンの特徴や、国内で製造販売する意義などについて紹介します。
目次
感染症のリーディングカンパニーとしての使命
新型コロナウイルス感染症が感染拡大するなかで、国内でワクチンを製造できない日本は、ワクチンを海外からの輸入に頼らざるをえない状況に陥りました。国家安全保障の観点から、国は「ワクチン開発・生産体制強化戦略」のもと、ワクチン開発や生産技術を持つ企業の支援を開始。Meiji Seika ファルマも感染症のリーディングカンパニーとして大きな使命感を抱き、国の支援を受け、新型コロナウイルス感染症のワクチンの開発・製造に挑むことを決意しました。
1946年のペニシリン製造開始から80年近く感染症と向き合ってきたMeiji Seika ファルマは、同じ明治グループのKMバイオロジクスとワクチンの研究・製造・流通・販売までの一体運営を推進しており、ワクチンはコア事業となっています。
新型コロナウイルス感染症ワクチンについては、KMバイオロジクスが、季節性インフルエンザワクチンや各種小児用ワクチンなどで豊富な実績を有する不活化ワクチンを開発しています。
Meiji Seika ファルマがワクチン開発に取り組むのは、新型コロナウイルス感染症対策のためだけではありません。すでに新型コロナウイルスと共存していく社会となり、その後も新しい感染症が発生する可能性もあります。現に、新型コロナの流行後にはエムポックスの感染拡大が問題となっています。そうした事態も想定し、国や大学などの研究機関と連携しながら、新型コロナウイルス感染症以外の感染症や疾患に適用する次世代mRNAワクチンの開発も進めています。
感染症領域に長年取り組んできた企業として、新型コロナウイルス感染症はもちろん、未知の感染症から人々を守ることは、私たちの使命。その想いで、これからも日々取り組んでいきます。
新しい挑戦
明治グループとして、子どもから大人まで安心して接種できるワクチンを複数開発して、新たなワクチンの選択肢を提供することで社会に貢献をしたいと考え、Meiji Seika ファルマでは、新たなモダリティーである次世代mRNAワクチンの開発に挑戦したのです。
着目したのは、米国のバイオベンチャーが創製した次世代mRNAワクチンです。新型コロナウイルスが猛威を振るっていた時に、海外で初回免疫の臨床試験を実施し、有効性と安全性において良好な結果が得られていたため、この新しいタイプのワクチンを一日でも早く日本国内に届けるべく、日本国内での開発をスタートしました。
関係省庁と相談しながら多くの治験施設や大学と連携し、「追加免疫」と呼ぶ3回目以降の接種に関する治験を日本で実施。
Meiji Seika ファルマのノウハウはもちろん、KMバイオロジクスが持つ豊富な経験も活かしながら、800人以上を対象に治験を行いました。その結果、追加免疫における安全性と有効性を実証し、世界で初めて次世代ワクチンの承認を取得することができました。
海外の大手製薬企業もこぞって次世代mRNAワクチンの開発に着手するなか、2023年11月、Meiji Seika ファルマが世界に先駆けて次世代mRNAワクチンの製造販売承認を取得。「国産のワクチンが必要」という強い思いのもと、産官学が一体となって取り組むことで実現しました。
少ない有効成分量で効果が長く続く次世代mRNAワクチン
新型コロナウイルス感染症の流行で広く普及することとなったmRNAワクチンは、タンパク質の設計図であるmRNAを、脂質の膜に包んだワクチンです。このワクチンを接種すると、mRNAが、対象となるウイルスの構造を模した「抗原タンパク質」を体内で生成します。この抗原タンパク質に対し、人間の免疫の仕組みが働き、ウイルスに対する抗体をつくることができます。
この次世代mRNAワクチンは、従来型のmRNAワクチンをさらに進化させたものです。
次世代mRNAワクチンは、新しい技術によってmRNAが複製されるように設計されています。従来のワクチンよりも少ない有効成分量で高い中和抗体価を維持するのが特長で、増幅期間は短期であり、動物実験の結果では、投与部位のmRNAは投与後8日以降で著しく低下することが認められ、抗原タンパク質も投与後15日で検出できる限界量より少なくなります。
ノーベル賞受賞者 ワイスマン博士が語るRNA技術の未来
次世代mRNAワクチンの技術は、新型コロナウイルス感染症に限らず、将来的に、インフルエンザなどほかの感染症やがんのワクチン、免疫炎症疾患などの治療にも応用できるため、大きな可能性を持っています。
2023年に「新型コロナに対するmRNAワクチン開発を可能にした塩基修飾法の発見」でノーベル生理学・医学賞を受賞し、次世代mRNAワクチンの開発にも携わったドリュー・ワイスマン博士も、「ワクチン以外にもRNA技術の応用が見込まれる病気はたくさんあります。鎌状赤血球貧血症や免疫不全症などの遺伝子疾患をRNAに搭載されている技術によって非常に簡単に治療することができます。他にも急性および慢性疾患にも効果があります。つまりRNAの可能性は計り知れないということです。ワクチンにも遺伝子治療にも治療薬にも使用できます。」とのメッセージを寄せています。
国産ワクチンを届けるために
次世代mRNAワクチンを国内で一貫生産するため、Meiji Seika ファルマは、株式会社ARCALIS(福島県)と共に生産体制を構築。ARCALISが持つ最先端技術やmRNAに特化した事業運営に基づく開発スピードと、Meiji Seika ファルマグループが持つ、生産や安全管理のノウハウ。これらのシナジーで、安全で有効なワクチンの日本国内での安定生産・安定供給の道筋をつけました。
新型コロナウイルス感染症ワクチンは、インフルエンザワクチンと同様に、その時々で流行するウイルス株にあわせて開発・製造する必要があります。次世代mRNAワクチンを含むmRNAワクチンは、短期間で大量に開発・製造することが可能です。この強みを活かし、流行株に対応したワクチンを迅速に供給していきます。
2024年秋の供給に向けては、次世代mRNAワクチンの原薬を福島県南相馬市にあるARCALISの原薬製造工場で製造し、原薬を製剤化する工程はMeiji Seika ファルマの国内工場で実施。今後、生産施設を拡充し、国産ワクチンとして迅速に供給できる製造体制の強化を進めていきます。