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私たちが献血した血液から、重要な医薬品がつくられていることを知っていますか。実は、献血された血液のうち約半分が、血漿分画製剤(けっしょうぶんかくせいざい)という医薬品の原料として使われています。
血漿分画製剤は、手術の際に止血管理として使われるほか、肝臓の疾患の治療など幅広い領域で用いられます。医療技術が進歩した現在でも、人の血液を原料として製造される血漿分画製剤を必要とする人が多く存在します。
Meiji Seika ファルマは2025年4月から、同じ明治グループのKMバイオロジクスが以前から製造してきた血漿分画製剤の2製品の販売を開始しました。
製造・販売を明治グループとして担うねらいは何なのでしょうか。2社の担当者に話を聞きました。

田中 信寛
Meiji Seika ファルマ株式会社
医薬営業本部 ワクチン・血漿分画領域部 部長

矢治 博幸
KMバイオロジクス株式会社
生産本部 SCM(サプライチェーンマネジメント)部 部長
目次
血漿分画製剤とは?
血漿分画製剤は、健康な人から献血された血液を原料に、血液内にある治療に必要な血漿のタンパク質を分離・精製してつくられます。手術の際の止血管理や、肝臓の疾患などさまざまな重篤な症状の治療に使われ、医療現場に欠かせない医薬品です。患者さんの痛みや負担を大きく軽減する役目も担っています。
国内においては3社の製薬企業が、献血を実施する日本赤十字社と連携しながら、血漿分画製剤を製造しています。KMバイオロジクスはそのうちの1社で、1966年から製造を続けています。

医療現場の声を、品質・サービスの向上につなげる
Meiji Seika ファルマは2025年4月から、KMバイオロジクスが製造する血漿分画製剤の2製品の販売を開始。明治グループ内で製造から販売までを一貫して行う形になりました。
Meiji Seika ファルマが血漿分画製剤の販売を手がけるのは今回が初めてですが、KMバイオロジクスとはこれまでにも多くの製品で協業しています。「インフルエンザワクチン」においては、2018年からKMバイオロジクスが開発・製造を、Meiji Seika ファルマが物流・販売を担い、明治グループとして一体となり取り組んでいる実績があります。
製造・販売を一体で行うメリットは何なのでしょうか。
Meiji Seika ファルマの田中は次のように説明します。
製販一体によって、医療現場のニーズを素早くくみ上げ、製造現場に直接フィードバックできるので、品質やサービスの向上につなげやすくなることが最大のメリットです
例えば、医師や看護師から製品の使用状況やニーズを詳しくヒアリングし、そうした声をもとに製品のパッケージ容量や容器をより使いやすいものに改良するなど、すでに取り組み始めていることもあります。

需要に合わせて製造し、長期的な安定供給を
2社連携は、安定供給のためにも大きな意義があると言います。
というのも血漿分画製剤は、治療に欠かせない患者さんが多くいる一方で、製造に時間がかかる医薬品です。一般的な医薬品が約3カ月で製造できるのに対し、血漿分画製剤の場合、献血による採血・検査から製造、そして患者さんの元に届くまでに7~12カ月を要します。
「製造・販売一体になることで、今、医療現場でどれくらいの量が使われていて、将来的にどう変わっていきそうか、高い精度で需要を予測し、それを柔軟に製造計画に反映できるので、長期的な安定供給につなげやすくなります」(田中)
KMバイオロジクスの矢治も、2社連携の効果は大きいと話します。
「グループ会社同士の距離が近いので、密な情報共有ができます。先行して製販連携しているワクチンでは、製品や仕様の改良などに積極的に挑戦しているので、そこで得たノウハウを血漿分画製剤の事業にしっかりと活かせると思います」

KMバイオロジクスは、長年にわたる血漿分画製剤の製造を通して、開発から製造まで一貫して品質を重視し、安定的に製品を供給できる製造体制を構築してきました。
「献血という人々の善意で提供された血液を原料にしているので、無駄なく、より効率的に活用できるよう、常に検討を重ねています。同時に、安全性の追求にも取り組んでおり、高精度なウイルス除去膜を血漿分画製剤の製造において世界初で取り入れるなど、安全性の高い製品を供給したいという強い思いをもっています」(矢治)

血漿分画製剤の国内自給向上を目指して
多くの患者さんに必要とされる血漿分画製剤は、いかなる状況でも、供給を止めるわけにはいきません。Meiji Seika ファルマとKMバイオロジクスは、明治グループが扱う製品だけでなく、日本におけるすべての血漿分画製剤についても思いをめぐらせています。
日本政府は、人々の血液を原料とした血漿分画製剤に関して、安定供給はもちろん、「自国で賄うべき」という方針を掲げています。ただ実際には、一部の血漿分画製剤は輸入に頼っているため、国内自給の達成は長年の課題になっています。
「血漿分画製剤は、国の医療のインフラの一つです。血液という、ある意味で臓器を原料にする製品なので、倫理的な意味合いから国内自給をめざすのはもちろん、もしも輸入ができなくなったら、患者さんや医療現場に大きな影響が及ぶため、安全保障上のリスクからも国産化を推進する必要があります。しかし、国産化は、一企業の力だけでできることではありません。血漿分画製剤を製造する同業他社と意見交換しながら、どのように国内自給率を高めていくか、業界として力を入れて取り組んでいます」(田中)
また、安定供給のためには原料となる血液の確保が欠かせないため、献血の呼びかけも同業他社と共同で行っていると言います。献血の重要性や血漿分画製剤について生活者の方々に広く知ってもらおうと、ポスターや動画などを作成し広報活動を行っています。
明治グループとして、日本の医療に貢献していく
Meiji Seika ファルマとKMバイオロジクスの血漿分画製剤での製販連携は、まだ始まったばかりです。どのような思いで取り組んでいくのでしょうか。
田中と矢治は、力を込めて言います。
「血漿分画製剤は国においても重要な事業と位置づけられているので、明治グループとして一体で取り組むことに、大きな責任と使命感、やりがいを感じています」
安定供給と品質・サービスの向上、製品の国内自給率の向上を目指し、日本の医療や多くの患者さんの役に立っていきたいと思います。
製販一体となり、人々の健康に貢献していきます。