
- PROJECT STORY
- 医薬品の安定供給プロジェクト
人を救う医薬品の、
可能性を増やせ
MEMBERS
- M.Y.
-
生産本部
生産技術部一グループ
2013年入社
理工学系(修士)卒
- K.Y.
-
生産本部
βラクタム国産化推進グループ
2021年入社
工学系(修士)卒
- D.N.
-
生産本部
生産技術部二グループ
2010年入社
薬学系(修士)卒
- PROLOGUE
- 人を救う医薬品の、可能性を増やせ
βラクタム系抗菌薬を中心とした医薬品の安定供給を実現するために、新たな挑戦に乗り出したMeiji Seika ファルマの生産本部。一国からの輸入に依存していた医薬品に、さまざまな選択肢をつくること。国家規模のこのプロジェクトには、どんな苦労や価値があったのか。現在もプロジェクトに関わる3人の姿から、その全貌を紐解いていく。


- 01
- 危機を迎えた医薬品供給
医薬品の安定供給は、人々の健康を守るために不可欠な要素。しかし、日本における医薬品の供給体制にはいくつかの課題が存在し、特にβラクタム系の抗菌薬の製造・供給については、国家レベルでの対策が求められていた。Meiji Seika ファルマが掲げる「安定供給」は、そうした背景のもとで生まれたものだった。
製剤段階からプロジェクトに携わり、現在は本社で供給体制の整備に携わっているD.N.は、「医薬品の需給バランスは見えにくく、適正品質の医薬品の供給量が不足している中で、安定的に供給を続けるための体制が求められています」と語る。主に原薬の調達を担っているM.Y.は、業界全体で発生した薬事トラブルを受け、供給不足が深刻化したことを実感。基礎的な医薬品に重点を置きながらも、細分化された多数の品目を安定供給する必要があり、生産技術部では品目ごとに異なる対応を求められているという。一方、工場での技術検討に勤しむK.Y.は、こうした供給の安定化に向けたプランの一つとして進められている「自社製造」の可能性を模索中だ。製造予定のβラクタム系抗菌薬の成分は、厚労省が定める安定確保医薬品において最重要品目となる「カテゴリA」に分類される。その製造に挑むMeiji Seika ファルマの一員として、岐阜工場での安定的な生産を目指す。


- 02
- それぞれの困難、
それぞれの答え
今回のプロジェクトの進行には、これまでに数多くの困難が立ちはだかってきた。K.Y.は、コロナ禍による人員不足に直面。数リットルスケールから順調に数百リットルスケールまで検討が進んでいた生産菌の培養だったが、人員の減少により計画が延期となる危機に。 そこで、普段は別の検討をしているメンバーに声をかけ、議論を交わしながらその難関を突破した。M.Y.が向き合ったのは、医薬品の国際的な取引における規制の違い。薬事承認の基準は国ごとに異なり、日本の水準は世界においても厳しい点もある。その水準をクリアするために、粘り強く説明を重ねるだけでなく、ときには現地国に足を運んで、製造のどの段階において改善できるのかを共に議論することもあった。D.N.は、想定外の事態に対して、どのようにして解決を図るかが1番のハードルだったという。実際に、船便で輸送中の医薬品が火事で焼失するなど、計画通りに進まないケースが発生。これまで触れたこともなかった船荷の保証方法を学び、対処しなければならないという経験を経て、可能な限り柔軟であることが成功の鍵だったと振り返る。


- 03
- 思いがけない挑戦の学び
一つのプロジェクトに携わりながらも、異なる役割を担う3人は、印象に残った場面もそれぞれ違っていた。K.Y.が思い返すのは、βラクタム系抗菌薬の原薬をつくるべく工場が大きく作り替えられていく姿。 入社前に感じていた、「工場は決まったものを作り続ける場所」というイメージは、時代のニーズや法規制に合わせて変化していく姿を見て打ち砕かれた。M.Y.の印象に残っているのは、自分の専門領域である分析業務を越えて、さまざまな視点が身についたという成長体験。分析一筋だった自分が、製造や薬事に関わり、これほどスキルアップができるとは予想もしなかった。M.Y.と似た視点からプロジェクトを見ていたD.N.は、そうした範囲外の領域をまとめていく生産技術者のスピード感のある仕事を思い起こす。細分化される傾向にある技術職を、生産技術部が横串を指すようにひとまとめにする。そうして専門外における学びを、さまざまな部署や委託先企業と共有することで、「一緒に勉強させてくれてありがとう」という感謝の言葉さえかけてもらえた。


- 04
- 難題を越えて
手に入れたもの
安定供給という難題に立ち向かうことで、どのような価値がもたらされたのか。K.Y.が感じ取ったのは、βラクタム系抗菌薬の安定供給に関われることが自分自身にもたらした価値。入社以来このプロジェクトに携わり、日本にとって欠かせない原薬の製造に携われることが、仕事に向き合うときの大きなモチベーションになっていると語る。D.N.が手にしたのは、委託先企業との強固な信頼関係がもたらす「情報網」という価値。今後、新たなプロジェクトを進めていく上でも、貴重な情報が集まるネットワークが形成されたことで、より迅速な判断が可能になった。M.Y.が大切にしたいというのが、お客様に対する価値。医薬品の安定供給、それは製薬業界全体が抱える社会課題を解決することにもつながっている。まだ道半ばだと受け止めつつ、そこに貢献できたという大きな誇りが確かにある。


- EPILOGUE
- 答えを探し続けること
最後に、プロジェクトを通じて得られた3人の成長と、今後の展望を見ておこう。K.Y.が実感した成長は、これまでできなかったことが可能になったという体験。経験のなかった微生物培養を数リットルスケール、そしてさらに大規模なスケールの検討へと段階的に進むにつれて、多くの学びと達成感を得た。このプロジェクトで得た知識を活かして、さらなる立ち上げに参画することが現在の目標だという。一方のM.Y.は、専門外の業務や後輩への指導などを通じて得られた新たな視点を喜びつつも、そうした知識をもとにしてトラブルなく管理できる工場の実現を目指す。教育体制や運用体制の強化、デジタル化の導入など、さまざまな手段から安定供給に資する工場のあり方を追求していくつもりだ。D.N.は、今後も変化を続ける社会状況を踏まえて、今回得られた情報網を活かした判断能力の向上について語る。「5年後、今の状況は必ず変わっている。だからこそ、決めたことに固執せず、状況に応じた正しい判断を心がけたい。そして何よりお客様の目線で、安定供給の答えを探し続けること——それこそがMeiji Seika ファルマが向かうべき未来です」。