40周年記念企画

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秋田県におけるオリゼメート箱粒剤の効果的・効率的な使用方法

秋田県農業試験場 生産環境部 主任研究員

藤井 直哉

はじめに

東北地方における穂いもちの発生は葉いもちから連続して発生するため、葉いもちをいかに抑え込むかが重要である。オリゼメート箱粒剤をはじめとする育苗箱施用剤のいもち病に対する本田での防除効果は、東北地方であれば7月上~中旬まで持続するとされている。薬剤によっては穂いもちまで直接効果がみられるものがあるが、ほとんどの薬剤は、上位葉の葉いもちの発生を抑えることで、その後の穂いもちの発生を軽減する間接的な防除効果であると思われる。
秋田県における葉いもち防除はこれまでは水面施用剤が主体であったが、圃場の大区画化や生産者の高齢化が進み、省力技術として育苗箱施用剤の使用割合が増加している。平成24年度の葉いもち防除(水面施用剤、側条施用剤、育苗箱施用剤)における育苗箱施用剤の使用割合は約63%であり、広く現地に普及していることがわかる。一方で、現在市販されている育苗箱施用剤は多岐にわたり、いもち病防除剤だけでなく殺虫剤さらには紋枯病防除剤が組み合わされた混合剤も販売されているが同時に箱施用剤のコストは生産者にとって負担が大きく、より一層のコスト削減が求められている。ここでは代表的な抵抗性誘導型防除剤であるオリゼメート箱粒剤によるいもち病の低コストで効率的な防除事例を紹介したい。

Ⅰ Dr.オリゼプリンスエース粒剤による育苗期防除と本田葉いもち防除

一般的に、箱施用剤は育苗期間中に感染・発病した苗を移植する、「持ち込み」に対しては効果が発揮されにくく、葉いもちが多発生する場合がある(写真1)。秋田農試での試験の結果、育苗期間中に発生するいもち病に対して効果の高い育苗箱施用剤は、嵐剤等オリサストロビンが含まれている薬剤のみである(表1)。このため、秋田県では嵐剤の播種前あるいは播種時処理以外は、育苗初期のビームゾルあるいはベンレート水和剤の灌注処理(表2)を組み合わせることを指導している。
ここでは、より省力的な技術として、オリサストロビンとオリゼメートを組み合わせたDr.オリゼプリンスエース粒剤(成分:フィプロニル0.6%・オリサストロビン2.0%・プロベナゾール20.0%)について育苗期葉いもちと本田葉いもち防除効果を検討した。

写真1

表1 各種育苗箱施用剤による苗の葉いもち防除効果
(秋田農試 2012年)

1)殺虫剤(フィプロニル)との混合剤

表2 各種灌注剤による苗の葉いもち防除効果
(秋田農試 2012年)

1)登録上の使用時期は播種時~播種7日後頃

(1)育苗期葉いもちに対する防除効果試験

①方法

試験は2007年に秋田県秋田市雄和の秋田県農業試験場内パイプハウスで行った。播種は4月10日に実施し、30×60cmの育苗箱に100g(乾籾換算)播きし、出芽処理は無加温でポリシートによる被覆を8日間行った。薬剤は、嵐プリンス箱粒剤6、Dr.オリゼプリンス粒剤6、Dr.オリゼプリンスエース粒剤を供試した。嵐プリンス箱粒剤6は箱当たり薬剤散布量を10g、25g、50gとし、播種前日に床土混和した。4月18日(緑化期)にDr.オリゼプリンス粒剤6とDr.オリゼプリンスエース粒剤は箱当たり50gをそれぞれ散布した。播種15日後にいもち病菌(レース001)を接種し、播種32日後に200苗/箱(2反復)について発病と苗当たりの病斑数を調査した。

②結果

無処理区の発病苗率が16.3%と中発生条件下となった。嵐プリンス箱粒剤6は通常施用量である箱当たり50gの1/5量(10g)あるいは1/2量(25g)でも高い防除効果が確認された(表3)。また、Dr.オリゼプリンスエース粒剤は発病が全く認められず、高い防除効果が確認された(表3)。一方、Dr.オリゼプリンス粒剤6の防除効果は認められるものの、その程度は低かった(表3)。嵐プリンス箱粒剤6の成分の一つであるオリサストロビンは箱当たり10gという低薬量(箱当たり落下成分量の理論値は0.7g)でも苗の葉いもちに対する防除効果は高く、Dr.オリゼプリンスエース粒剤の箱当たり50g施用(箱当たり落下成分量の理論値は1.0g)の育苗期間における苗の葉いもちに対する防除効果の大部分はオリサストロビンに因る可能性が本試験の結果から示された。

表3 苗の葉いもちに対する各種薬剤の防除効果
(秋田農試 2007年)

1)同一英文字を付した数値間にはTukeyの多重検定による有意差(5%)がないことを示す。
2)防除価は発病苗率から算出した。

(2)本田における葉いもち防除効果

①方法

1)場内試験

試験は2007年に秋田県農業試験場内圃場にて実施し、4月10日に播種した後、4月18日(緑化期)に試験薬剤のDr.オリゼプリンスエース粒剤および対照薬剤のDr.オリゼプリンス粒剤6を育苗箱当たり50g散布した。なお、対照薬剤のDr.オリゼプリンス粒剤6施用苗と箱施用剤無施用苗には、苗の葉いもち防除剤として、4月18日にベンレート水和剤500倍液を育苗箱当たり500ml灌注した。5月15日に機械移植を行い、試験区としてDr.オリゼプリンスエース粒剤区、対照のDr.オリゼプリンス粒剤6区、無処理区を設けた(各区2反復)。移植43日後の6月27日に試験区間にいもち病菌(レース001)を接種し発病した稲株を設置した。調査は7月29日に各区100株の上位3葉について株毎に病斑を数えた。また、8月21日に各区50株について止葉病斑を数えた。

2)現地試験

試験は2008年に秋田県湯沢市の農家圃場で実施した。4月28日に播種した後、5月2日(緑化期)に試験薬剤のDr.オリゼプリンスエース粒剤および対照薬剤のDr.オリゼプリンス粒剤6を育苗箱当たり50g散布した。なお、対照薬剤のDr.オリゼプリンス粒剤6施用苗は、育苗期間の苗の葉いもち防除は行わなかった。5月27日に機械移植を行い、約30aの圃場を長辺方向に区切り、試験区としてDr.オリゼプリンスエース粒剤区は10a、対照のDr.オリゼプリンス粒剤6区は20aのそれぞれ単連制とした。供試薬剤以外のいもち病防除剤は施用しなかった。また、施肥および殺菌剤以外の一般防除は、現地の慣行に従った。いもち病は自然発生条件とした。葉いもち調査は7月30日に各区4地点(1地点50株)の上位3葉について株毎に病斑を数えた。穂いもち調査は出穂約43日後の9月17日に各区4地点(1地点25株)の全穂について発病程度別に数えた。

表4 場内試験におけるDr.オリゼプリンスエース粒剤の葉いもち防除効果

1)防除価は7月29日および8月21日の発病株率の平均値から算出した。
2)同一英文字を付した数値間にはTukeyの多重検定による有意差(5%)がないことを示す。

②結果

1)場内試験

7月29日の無処理区における上位3葉の発病株率は100%、株当たり病斑数は6.98と多発生条件下での試験であり、Dr.オリゼプリンスエース粒剤区の発病株率は19.5%(防除価80.5)、株当たり病斑数は0.25個であり、Dr.オリゼプリンス粒剤6区の発病株率は32.0%(防除価68.0)、株当たり病斑数は0.60個であった。Dr.オリゼプリンスエース粒剤とDr.オリゼプリンス粒剤6区には統計的有意差が認められず、ほぼ同等の防除効果が得られた(表4)。また、8月21日における無処理区の止葉の発病株率は100%、株当たり病斑数は7.32と多発生条件であり、Dr.オリゼプリンスエース粒剤区の発病株率は12.0%(防除価88.0)、株当たり病斑数は0.12個であり、Dr.オリゼプリンス粒剤6区の発病株率は30.0%(防除価70.0)、株当たり病斑数は0.46個あった。Dr.オリゼプリンスエース粒剤とDr.オリゼプリンス粒剤6区には統計的有意差が認められず、ほぼ同等の防除効果が得られた。

2)現地試験

葉いもち調査の結果、Dr.オリゼプリンスエース粒剤区の発病株率は1.5%(株当たり病斑数は0.03個)となり、対照のDr.オリゼプリンス粒剤6区の発病株率14.0%(株当たり病斑数は0.16個)に比べて有意に高い防除効果を示した(表5)。Dr.オリゼプリンスエース粒剤区で確認されたのは1~2世代病斑であり、全て散在分布であった。一方、Dr.オリゼプリンス粒剤6区の病斑は3世代病斑が中心であり、集中分布が確認された。調査圃場周辺では、調査対象外の同一農家ではベンレート水和剤による育苗期の苗の葉いもち防除が行われ、本田における葉いもちの発生が少ないことや他農家の圃場でも調査圃場に影響を与える多発生圃場も無かったことから、Dr.オリゼプリンス粒剤6区では育苗施設からの罹病苗の持ち込みの可能性が推察された。穂いもちは、Dr.オリゼプリンス粒剤6区で発病穂率5.4%(発病株率75.0%)と被害が多かったが、Dr.オリゼプリンスエース粒剤区は発病穂率2.3%(発病株率38.0%)とDr.オリゼプリンス粒剤6区に比べて有意に低い発生となった(表5)。以上の結果から、Dr.オリゼプリンスエース粒剤の施用は、本田における葉および穂いもちの発生を減少させることが確認された。

表5 現地試験におけるDr.オリゼプリンスエース粒剤の葉いもちおよび穂いもちに対する防除効果

1)同一英文字を付した数値間にはt検定による有意差(p<0.01)がないことを示す。

(3)Dr.オリゼプリンスエース粒剤の減量施用による防除試験

①方法

試験は2009年に秋田県農業試験場内圃場にて実施した。対照薬剤である播種時専用剤のファーストオリゼプリンス粒剤は4月10日に播種時覆土前に育苗箱当たり50g散布した。試験薬剤の組み合わせたDr.オリゼプリンスエース粒剤は育苗箱当たり25gを4月17日(緑化期)に散布した。なお、対照薬剤のファーストオリゼプリンス粒剤施用苗と箱施用剤無処理苗には、4月16日にベノミル水和剤500倍液を育苗箱当たり500ml灌注した。5月15日に機械移植を行い、試験区としてDr.オリゼプリンスエース粒剤区、対照のファーストオリゼプリンス粒剤区、無処理区を設けた。移植48日後の7月2日に試験区間にいもち病菌(レース001)を接種し発病した稲株を設置した。調査は7月31日と8月20日に、1)場内試験と同様の調査法で実施した。

②結果

無処理区において、7月31日の発病株率は100%と多発生条件下での試験であったが、Dr.オリゼプリンスエース粒剤の箱当たり25g施用はファーストオリゼプリンス粒剤の箱当たり50g施用と比較して差はなく、高い防除効果が示された(表6)。また、8月20日の発病株率も箱当たり25g施用と50g施用は同様に高い防除効果が示された。
 育苗期防除剤としての嵐剤と本田葉いもち防除剤を組み合わせたDr.オリゼプリンスエース粒剤は現在秋田県で普及しているいもち病の防除体系に合致し、かつ省力的な薬剤といえる。また、Dr.オリゼプリンスエース粒剤は、従来の育苗期防除と箱施用剤を組み合わせた防除体系と10a当たりの薬剤費に大きな差はないが、箱施用剤としての価格は高く、減量施用は普及拡大につながる重要な技術といえる。

表6 Dr.オリゼプリンスエース粒剤の減量施用による葉いもち防除効果

1)防除価は7月31日および8月20日の発病株率の平均値から算出した。
2)同一英文字を付した数値間にはTukeyの多重検定による有意差(5%)がないことを示す。

Ⅱ 現地における減農薬防除実証

秋田県では平成20年に減農薬防除体系を秋田県産米生産のスタンダードとする「あきたecoらいす」プロジェクトを立ち上げた。平成20~24年度に県内各地で実施した実証では、いもち病の省力・低コスト防除技術を基礎として、農薬の成分回数を慣行の2分の1以下に削減した減農薬防除体系の技術を確立した。ここでは、育苗期いもち病と葉いもち同時防除剤としてDr.オリゼプリンスエース粒剤あるいは育苗期いもち病防除剤とファーストオリゼフェルテラ粒剤の体系により穂いもちを省略した減農薬防除の現地実証の一部を紹介する。

(1)2011年 秋田県北秋田市

①方法

試験実施場所:北秋田市 田中ファーム(約30ha)、実証地区およびその周辺地区における防除は以下のとおり。

現地実証試験の防除体系

調査:葉いもち調査(8月2日):各圃場100株について調査し、発病株率、株当たり病斑数を算出した。調査圃場数は防除体系A:13圃場、防除体系B:7圃場、田中ファーム周辺圃場:10圃場。穂いもち調査(9月12日):各圃場50株の全穂の穂首発病と1/3以上発病穂について調査し、発病株率、発病穂率を算出した。防除体系A:13圃場、防除体系B:7圃場、田中ファーム周辺圃場:5圃場。

表7 実証地区とその周辺地区におけるいもち病と紋枯病の発生状況(2011年)

②結果

防除体系AおよびBを実施した圃場では葉いもちの発生が少なかったことから穂いもち防除を省略した。8月2日の葉いもち調査の結果、実証圃場の周辺圃場では葉いもちの平均株率が27.3%、平均株当たり病斑数は約0.8個と葉いもちの発生は少なかった。実証圃場では防除体系A、Bとも葉いもちの発生はほとんど認められなかった(表7)。9月12日の穂いもち調査では、実証圃場の防除体系Aにおいて平均株率が5.8%、平均発病穂率が0.4%であった。一方、前年大豆を作付けした圃場における防除体系Bでは穂いもちの平均発病株率は20.0%、平均発病穂率は1.2であった(表7)。本年は葉いもちの発生が少ない気象条件であったこともあり、大豆作付け後の水稲圃場(防除体系B)でも葉いもちの発生は少なかった。しかし、同圃場では稲の葉色が濃くなり、葉いもちに対する抵抗力が低下する傾向があり、水稲箱施用剤の50g/箱処理が必要であると思われる。

(2)2012年 秋田県仙北郡美郷町

①方法

試験実施場所:美郷町 アグリエース三井寺(約30ha)、実証地区およびその周辺地区における防除は以下のとおり。

実証試験の防除体系

表8 実証地区とその周辺地区におけるいもち病の発生状況(2012年)

調査:葉いもち調査(7月25日):各圃場100株について調査し、発病株率、株当たり病斑数を算出した。調査圃場数は防除体系A(ビームゾル500倍灌注):5圃場、防除体系B(ベンレート水和剤500倍灌注):8圃場、アグリエース三井寺周辺圃場:10圃場。穂いもち調査(9月12日):各圃場50株の全穂の穂首発病と1/3以上発病穂について調査し、発病株率、発病穂率を算出した。調査圃場数は防除体系A:5圃場、防除体系B:8圃場、アグリエース三井寺周辺圃場:5圃場。

②結果

実証圃場では葉いもちの発生が少なかったことから穂いもち防除を省略した。7月25日の葉いもち調査の結果、実証圃場の周辺圃場では葉いもちの平均株率が3.7%、平均株当たり病斑数は0.1個と葉いもちの発生は少なかった。実証圃場では防除体系A、Bとも葉いもちの発生はほとんど認められなかった(表8)。防除体系A、Bいずれにおいても持ち込み由来のいもち病斑はなく、育苗期におけるビームゾルおよびベンレート水和剤の効果が確認された。9月12日の穂いもち調査では、実証圃場の防除体系Aにおいて、平均発病穂率は0%と穂いもちの発生はなかった(表8)。大豆後作圃場における防除体系Bは、平均発病株率は11.3%と防除体系Aに比べてやや多かったが、平均発病穂率が0.7%(最大1.3%)であり収量には影響は認められなかった(表8)。穂いもちの発生がやや多くみられた圃場については、隣接した一般圃場からの葉いもちの影響を受けたためと思われた。

Ⅲ 栽植密度がオリゼメート箱粒剤のいもち病防除効果に及ぼす影響

省力的な防除技術である育苗箱施用剤は、圃場の大区画化に伴い今後さらに使用量が増加すると思われる。しかし、栽植密度が箱施用剤のいもち病の防除効果に及ぼす影響は不明であり、特に栽植密度を少なくし、使用育苗箱が減少した場合、10aあたりの薬剤投下量が少なくなる可能性がある。そこで本試験では、栽植密度が水稲育苗箱施用剤のいもち病防除効果に及ぼす影響を検討する。ここでは、県内で広く使用されているファーストオリゼ箱粒剤の防除効果について検討した。

(1)方法

①2012年

耕種概要 実施場所
秋田県農業試験場内圃場、品種:ナツミノリ、播種:4月13日(播種量100g/箱 中苗)、出芽処理:無加温でポリシートによる被覆を4月18日まで行った。4月20日にビームゾルの500倍液を500ml/箱灌注した。基肥:N,P2O5,K2Oを各6.0kg/10a、追肥:N:1.5kg/10a(減分期)。移植:5月18日、栽植密度:20.8株/m2(69株/坪区)、15.2株/m2(50株/坪区)、使用箱枚数:25箱/10a(69株/坪区)、16箱/10a(50株/坪区)。各区2反復。植え付け本数4~5本/株。出穂期:8月2日。
試験薬剤の処理
ファーストオリゼ箱粒剤を4月13日の播種時に50g/箱散
調査方法
葉いもちは7月27日に各区100株の上位2葉について、株毎に病斑を数えた。また、8月17日に各区100株について止葉病斑を数えた。
病原菌の接種
6月25日に各試験区間にいもち病菌(レース001)を接種し、発病した苗を設置した。

②2013年

耕種概要 実施場所
秋田県農業試験場内圃場、品種:ナツミノリ、播種:4月10日(播種量100g/箱 中苗)、出芽処理:無加温でポリシートによる被覆を4月17日まで行った。4月18日ビームゾルの500倍液500ml/箱灌注した。基肥:N,P2O5,K2Oを各6.0kg/10a、追肥:N:1.0kg/10a(減分期)、移植:5月16日、栽植密度:20.8株/m2(69株/坪区)、15.2株/m2(50株/坪区)、使用箱枚数:25箱/10a(69株/坪区)、16箱/10a(50株/坪区)。各区2反復。植え付け本数3~4本/株。出穂期:7月31日。
試験薬剤の処理
ファーストオリゼ箱粒剤を4月10日の播種時に50g/箱散布した。
調査方法
葉いもちは7月26日に各区100株の上位2葉について、株毎に病斑を数えた。また、8月22日に各区100株について止葉病斑を数えた。
病原菌の接種
6月20日に各試験区間にいもち病菌(レース001)を接種し、発病した苗を設置した。

表9 栽植密度がファーストオリゼ箱粒剤の葉いもち防除効果に及ぼす影響(2012年)

1)上位2葉における病斑数、2)止葉における病斑数
防除価は7月27日の株当たり病斑数の平均値から算出した。ファーストオリゼ箱粒剤の防除価はそれぞれ同じ栽植密度の無処理区における発病に対する効果の程度を示す。

(2)結果

①2012年

7月27日の無処理における上位2葉あたりの病斑数は69株/坪区で0.4個、50株/坪区で0.3個であり、差はなく、少発生の条件であった(表9)。7月27日の無処理の69株/坪区における発病株率が93.5%、上位2葉あたりの病斑数は0.4個であるのに対し、ファーストオリゼ箱粒剤の69株/坪の発病株率は2.0%、上位2葉あたりの病斑数は0個と高い防除効果が確認された。同様に無処理の50株/坪区における発病株率が85.5%、上位2葉あたりの病斑数は0.3個であるのに対し、ファーストオリゼ箱粒剤の50株/坪の発病株率は18.5%、上位2葉あたりの病斑数は0.0個と防除効果が確認された(表9)。7月27日のファーストオリゼ箱粒剤の69株/坪の発病株率は2.0%であるのに対し、50株/坪区の発病株率は18.5%とやや高くなった。8月17日の止葉病斑数についても同様に両区とも高い防除効果を示した(表9)。

②2013年

無処理(69株/坪)における7月26日の発病株率は100%、株当たりの病斑数は18.0個であり、多発生条件下での試験となった(表10)。7月26日において、無処理の69株/坪区と50株/坪区では葉いもちの発生程度に大きな差は認められなかった。7月26日の無処理の69株/坪区における発病株率が100%、上位2葉あたりの病斑数は18.0個であるのに対し、ファーストオリゼ箱粒剤処理の69株/坪区の発病株率は10.5%、上位2葉あたりの病斑数は0.1個と高い防除効果が確認された。同様に無処理の50株/坪区における発病株率が100%、上位2葉あたりの病斑数は14.5個であるのに対し、ファーストオリゼ箱粒剤処理の50株/坪区の発病株率は19.5%、上位2葉あたりの病斑数は0.3個と防除効果が確認された(表10)。また、7月26日のファーストオリゼ箱粒剤処理の69株/坪区の株当たり病斑数は同剤処理の50株/坪区の株当たり病斑数と大きな差は認められなかった。8月22日の止葉における発病株率はファーストオリゼ箱粒剤処理の50株/坪区が同処理の70株/坪区と比べてやや高かったが、株当たり病斑数は差が無く同程度の防除効果があると思われた。以上のことから、ファーストオリゼ箱粒剤処理の69株/坪区とファーストオリゼ箱粒剤の50株/坪区の葉いもちの発生程度に差はなく、50株/坪栽培における同剤の50g/箱処理は葉いもちに対して十分な効果が得られることが示唆された。

表10 栽植密度がファーストオリゼ箱粒剤の葉いもち防除効果に及ぼす影響(2013年)

1)上位3葉における病斑数、2)止葉における病斑数
防除価は7月26日の株当たり病斑数の平均値から算出した。ファーストオリゼ箱粒剤の防除価はそれぞれ同じ栽植密度の無処理区における発病に対する効果の程度を示す。

おわりに

本県では、農家の高齢化、兼業化が進みさらに大区画化圃場が増えた現在、急速に蔓延するいもち病に対して発生予察に応じた適期防除が困難な状況にある。そのような背景から、いもち病防除は箱施用剤による防除割合は年々増加しており、より省力・低コスト化が進むと思われる。しかし、育苗期におけるいもち病防除を実施せず、持ち込みにより葉いもちが多発した場合、本田における穂いもち防除は斑点米カメムシ類を対象とした無人ヘリによる殺虫・殺菌混合剤の散布が多いため、いもち病防除のタイミングに合わないことや、無人ヘリによる防除が天候に左右されやすく、防除タイミングを逸しやすいことから、無人ヘリのみでは対応しきれない場面が想定される。労力・コストがかかる穂いもち防除を省略するために、育苗期防除と本田葉いもち防除の徹底が重要である。現時点では育苗期防除と葉いもち防除を兼ねる箱施用剤は嵐剤とDr.オリゼプリンスエース粒剤のみであるが、耐性菌対策や対象害虫の発生状況から同剤の使用場面が限られる場面が多々ある。より広い地域と多くの生産者が活用できる箱施用剤の開発に期待したい。

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