散布技術の進化とオリゼメート 機械化の進展とともに

機械化の進展とともにオリゼメートを取り巻く環境も進化をしてまいりました。このコンテンツでは、その機械化の変遷とオリゼメート散布技術の進展、水稲作における農薬と散布機の現状と展望、そして有人ヘリコプターやラジコンヘリコプターを活用した空中散布をテーマにした内容をご紹介します。

空中散布(有人ヘリコプター、ラジコンヘリコプター)

このような背景により、農業地域において転作田を中心に他作物の栽培が増加し、高齢化、混住化が進む中、有人ヘリのもつ利点を活かしつつ、これを補完する新たな防除システムを構築する必要に迫られた。ホビー用の無人ヘリコプターが昭和50年代に普及し始めた時から農薬散布に利用しようとするアイデアは生まれており、1980年、農林水産省が社団法人農林水産航空協会に助成し、「遠隔誘導式小型飛行散布装置(RCASS:Remote Control Aerial Spraying System)」開発に着手した。同協会は、RCASS研究開発会議を設置し、委員として航空機専門家、無人ヘリ開発に意欲のある民間機械メーカーの技術者や病害虫防除関係者を委嘱し、開発の目標を、

  1. (1)航空機製造事業法の規制対象外となる総重量100kg以内
  2. (2)有効搭載能力30kg程度
  3. (3)飛行性能(操縦性、散布作業性)に優れていること

などとし、操縦性や薬剤散布の安定性等を考慮して、同軸二重反転式の無人ヘリとして着手し、1987年にRCASSの試作機が完成した。

一方、ヤマハ発動機は、1988年シングルローター式の「R50」を完成した。この機体の有効性は確認されたが、無人ヘリの農業利用は世界初の試みであり、活用方法も全く手探り状態だった。このため、農林水産航空協会は、農林水産省が平成元年(1989)に定めた「無人ヘリコプター利用技術暫定実施基準」に基づき、(1)飛行諸元の解明、(2)散布基準の確立、(3)誘導電波の取り扱い方法の解明、(4)操作要員のあるべき条件、(5)経済性の評価等のための現地実証試験を行った。この現地実証試験の成果をふまえ、平成3年農林水産省は本格利用のための「無人ヘリコプター利用技術指導指針」を制定し、機体・操作要員の管理、運用方法ならびに農水協の役割等を定め、これにより農林水産航空協会を中心とする無人ヘリの一元的な管理並びに利用技術開発体制が確立された。昭和25年の水稲の実績では932,000ヘクタールになっており、作付面積のおおよそ三分の一を防除しているといわれている。

現状の水稲の航空防除は稲いもち病と斑点米カメムシ類が主たる対象となっているが、航空防除の初期では多くの病害虫が対象であり、その中でもいもち病は主要な病害であった。長らく水銀粉剤が使用されてきたが、昭和40年代半ばに新規化合物の殺菌剤の試験が有人ヘリで行われた。当時は粉剤が主体であったが、液剤、微量剤、微粒剤Fへの転換がはかられた時期でもあった。いもち病防除では液剤系が主流となる中で、昭和57年にオリゼメート粒剤8%製剤の2kg/10a散布の試験を宮城県、栃木県、新潟県で実施した。この際に有人ヘリによる従来の地上用粒剤の3kg/10a散布では、東北地方のような大面積において微量散布、液剤少量散布に比べて極めて作業効率が劣り実用性に乏しいため、1kg/10a程度の少量散布が要望されていた。有人ヘリ用の粒剤散布装置は独自に国内の機体製造会社が開発したものであり、海外の文献にも紹介されているが、粒剤少量散布の経験はなかった。そのため空中散布用粒状殺菌剤の少量化を検討するに当たり、地上散粒機と同様に回転円盤の遠心力で拡散させる方式は粒子径の小さい粒剤では十分な散布幅が得られないために、製剤を改良したことにより有効散布幅を広く、落下の均一性も高いことを確認した。翌年以降は20%製剤の1kg/10a散布の基礎試験、圃場の効果試験を国の補助事業、受託試験で実施し、問題点の検討、農薬登録の適用拡大を行った。偶然ではあるが当時は無人ヘリコプターの利用開発時期でもあった。事業化に伴い、平成8年から宮城県の事業散布において河川水への影響も調査した。

無人ヘリコプターは平成3年に岩手県、宮城県で試験を行い、実用化に至った。無人ヘリの粒剤散布装置は地上の散粒機と同様の構造であるが、飛行高度3〜4mで機体を中心として10m程度の範囲に均一に散布する技術に工夫がされている。その後、平成13年に40%製剤の0.5kg/10a散布の試験を岩手県、宮城県、栃木県、長野県で行い、散布の均一性および防除効果を確認した。平成25年の無人ヘリの実績はオリゼメート粒剤20が5,858ヘクタール、オリゼメート粒剤40が3,039ヘクタールであり、前年よりも同40の0.5kg散布が増加しており、この中では北海道と宮城県の面積が多い。

現在、「攻めの農林水産業」の一環として、低コスト稲作を推進するために多様な直播栽培技術が開発されており、その一環として育苗箱処理に代わる新たな防除手法が検討されている。また、航空防除ではドリフト防止対策が永年の課題である。そのため粒剤の積極的な利用について今後の技術開発の展開が望まれるところである。

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