散布技術の進化とオリゼメート 機械化の進展とともに

機械化の進展とともにオリゼメートを取り巻く環境も進化をしてまいりました。このコンテンツでは、その機械化の変遷とオリゼメート散布技術の進展、水稲作における農薬と散布機の現状と展望、そして有人ヘリコプターやラジコンヘリコプターを活用した空中散布をテーマにした内容をご紹介します。

4.乗用田植機を用いた農薬散布作業

水稲の本田内への農薬散布作業として、最も利用されている剤型は「粒剤」であり、これを散布する作業では、粒剤用の背負式動力散布機や肩掛け散粒機等、粒剤用の散布機が広く用いられている。また、「フロアブル剤」は、前述のとおり、水田畦畔あるいは本田内を作業者が薬剤のボトルを持ち、いわゆる手振り散布が主流と考えられる。したがって、両剤型とも、散布作業としては作業者が歩行しながら行う作業であり、作業能率、作業可能面積等には自ずと限界があり、労働負担も大きいため、経営規模の拡大やほ場の大区画化への対応が困難なものとなる。したがって、より高能率、省力的かつ労働負担の少ない散布作業を行うため、乗用機械を用いて農薬を散布する方法が各種検討されてきた。

先ず、開発が試みられたのは、水田内を走行するための乗用車両に作業機を搭載する方式であり、いわゆる乗用管理機を本機とし、これに搭載する方式の粒剤散布装置が開発された。しかし、除草剤そのものの研究開発が進み、田植え作業直後に散布して、その効果が比較的長期間継続する薬剤が多数実用化された。これを受け、田植え作業直後から散布でき、その効果が長期間継続するタイプの除草剤を散布するために、乗用田植機の植付け部に装着する方式の散布装置が開発された5)。

ここで、いわゆる水稲用除草剤の「田植え同時処理」技術は、前記の田植え直後に散布可能な除草剤とこの田植機装着式粒剤散布装置が開発された事により、農家が利用可能な散布技術になったといえる。引き続き、田植え直後に散布可能な薬剤が多数開発され、また、散布装置の改良も進められ、市販される多くの乗用田植機に装着できる装置が開発されたことから、現在に至るまで普及しつつある。現在では、特に、6条植以上の比較的大型の乗用田植機を用いて、大規模な水稲栽培を行っている農家に広く用いられている。

そこで次項では、現在市販されている田植機装着式粒剤散布装置について解説する。

1)田植え同時処理と散布装置

田植え同時処理には、大きく分けて、(1)田植え機に装着した専用の散布装置を用いて、田植え作業と同時に散布する農薬として登録された薬剤を、田植えと同時に散布する方法と、(2)田植機に装着した側条施肥装置を用いて、農薬が混合された肥料、あるいは、肥料に混合して散布する農薬として登録された薬剤を、所定の方法で肥料に混合して散布する方法、の2種類がある6)

①の方法では、粒剤またはフロアブル剤の薬剤が利用され、それぞれの剤型に専用の散布装置が市販されている。また、(2)の方法では、粒状肥料用の側条施肥装置を用いる場合と、ペースト肥料用の側条施肥装置を用いる場合がある。粒状肥料用側条施肥装置では、製品として農薬が予め混合された粒状肥料を用いるが、ペースト肥料用側条施肥装置では、側条施肥用のペースト肥料について、混合して使用する事が農薬として登録された薬剤を用いて、所定の濃度となるよう、作業直前に肥料に混合して使用する。
次項以降では、以上の2つの方法に用いられる散布装置について解説する。

2)田植機装着式粒剤散布装置

田植え同時処理が可能な除草剤の技術は1990代半ばに普及段階に入ったといわれているが、本格的な普及は、田植え同時処理を主たる処理方法としたいわゆる「水稲一発除草剤」の粒剤が市販された平成13年以降である。当時、10a当たりの散布量が1kgである、いわゆる1キロ剤は既に普及しており、先行して普及していた3キロ剤(10a当たり散布量が3kgの粒剤)に比べて、散布量が少なくなり、作業時間の短縮等の効果は確認されていたが、薬剤の価格が比較的高く、これを散布するには、従来と同じく、背負い式動力散布機や肩掛け式散粒機等が使われ、結局、歩行作業から抜け出せていない状況にあった。

そこで、田植え同時処理を主な処理方法とする製剤を開発したある農薬メーカーでは、動力散布機等を製造販売していた防除機メーカーと共同で、新規開発した田植え同時処理用粒剤の専用の散布機として、乗用田植機に後付けする方式の粒剤散布装置を実用化し、田植え作業と同時に散布作業が完結することを大きな利点とすることと同時に、同装置と新しい粒剤をセットで販売する方式を導入したところ、農家に好評で、その後現在に至るまで全国に普及した。

図2 田植機装着式粒剤散布装置の例

図3 粒剤散布装置と育苗箱施用剤散布装置との併用例

表2 田植機装着式粒剤散布装置(図2)の主な仕様

この田植え同時処理粒剤用散布装置の特徴は、乗用田植機の苗載せ台に、専用の部品を用いて比較的簡単に固定することができ、動力源は、乗用田植機の本体バッテリから電力の供給を受けるだけでよく、電気信号を利用して、田植え作業の速度に連動して、一定面積当たり、所定の散布量を維持する機能(いわゆる、作業速度連動機能)により、吐出量を自動的に調節する機能を持つことである。このため、田植機の運転者は、田植えの作業中、散布装置の調節をする必要がなく、田植え作業に専念できる。装着できる乗用田植機の機種も、徐々に拡大し、主なメーカーの田植機の主要な機種(植付け条数が4、5、6、8、10条)に対応したこと、また、散布装置としては、比較的安価であったこともあり、全国的に普及した。

その後、田植え同時処理が可能な粒剤が多数登録・市販化され、これに対応する形で、それら多くの薬剤に対応できる粒剤散布装置が実用化され、現在市販されている。この装置の代表例を図2に、それらの主な仕様諸元を表2に示す。

これらの装置は、散布する各種の粒剤毎に、調量ダイヤルの数値を設定することで、前記の作業速度に連動した自動調節機能が作動し、所定の散布量(10a当たり1または3kg)で散布する事ができる。調量ダイヤルの設定値は、薬剤によってはメーカーや販売店で既に求められている場合もあるが、未知の場合でも、同装置を計量モードで作動させ、専用の計量袋に薬剤を一定時間回収することで、設定値を現場で測定する事ができる。

さらに、図3のように、乗用田植機の機種によっては、同装置と共に、田植機装着式の育苗箱施用剤散布装置も装着し、田植え作業時に育苗箱施用剤と除草剤を同時散布する事も可能である。

3)田植機装着式フロアブル剤散布装置

図4 田植機装着式フロアブル剤散布装置の例

表3 田植機装着式フロアブル剤散布装置(図4)の主な仕様

田植え同時処理が可能な除草剤には、前述のとおり、フロアブル剤も多数あり、これらを散布するための装置として、田植機装着式のフロアブル剤用滴下装置が開発されている。

同装置は、粒剤用散布装置と同じく、乗用田植機の苗載せ台に、専用の部品を用いてに固定し、田植機の植付け爪回転部の所定の箇所に、棒状の駆動竿を接続するだけの簡易な構造であるが、電源が不要でありながら、植付け部の回転により駆動される事から、田植え作業の速度に連動して、所定の量の薬液を滴下する機能を持っている。このため、田植機の運転者は、田植えの作業中、散布装置の調節をする必要がなく、田植え作業に専念できる。現在市販されている代表的な装置を図4に、その主な仕様諸元を表3に示す。 同装置も、主なメーカーの乗用田植機の主要機種(植付け条数が4、5、6、8条)に装着でき、薬液タンク2Lに薬液を充填すれば、散布量500ml/10aのフロアブル剤を40a分連続して散布できる能力を持つ。

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