Dr.岩田の植物防御機構講座

植物の持つ防御機構についての最新の知見とプラントディフェンスアクティベーター(植物防御機構活性化剤)についての最新の知見を総合的に学習ができるコンテンツです。

第1章:植物と病気

第1章 植物と病気(2)

植物の病気の種類

植物の病気は、病原菌の種類、病徴・症状、発病部位、植物の種類の違いなどによって類別されており、それぞれのよび名があります。

植物の病気の種類;病原菌の種類で分けると

植物に病気をおこす病原菌の種類としては、形の大きい順に、糸状菌(しじょうきん)、細菌、ファイトプラズマ、ウイルス、ウイロイドが知られています。これに、根に瘤などをつくらせるセンチュウ(線虫)を加えることもあります。それぞれ糸状菌病、細菌病、ウイルス病などとよばれます。このように植物の病気を病原菌の種類別で分けると、病気の発生生態や伝染の仕方をある程度予測することができる、防除方法を予想できるなどの利点があります。

糸状菌

糸状菌は、分枝した糸状の菌糸体で栄養成長する微生物(菌類、かび)で、その形状から糸状菌と名づけられています。細菌による感染症が中心の動物とは異なり、植物の病害はその8割前後は糸状菌によるものです。そのため糸状菌は植物病害の防除上最も重要な微生物群となっています。
糸状菌がつくる胞子は生殖器官に相当し、その形状、繁殖方法の違いは、分類の指標ともなります。糸状菌は、真菌と変形菌に大きく分けられ、さらに真菌は子囊(しのう)菌、担子(たんし)菌、ツボカビ菌、接合菌などに分けられます。植物病原菌はいもち病菌・うどんこ病菌などが含まれる子囊菌と、さび病菌などが含まれる担子菌に属するものが圧倒的に多くなっています。子囊菌は、小さな袋(子囊)のなかに有性生殖でつくられた胞子(子囊胞子)を包み込んでいるのが特徴です。また、担子菌は、有性生殖で担子器の上に胞子(担胞子)をつくり、あるものは肉眼で見ることのできる子実体(しじつたい;きのこ)をつくる特徴があります。
繁殖の際に有性世代を経ないかそれが知られていない糸状菌は、不完全菌として分類されます。植物病原菌には不完全菌に分類されているものが多くなっていますが、その大部分は本来は子囊菌に属するものと考えられています。
なお、鞭毛で運動する胞子(遊走子)を形成するべと(露菌)病菌・疫病菌は、外観は菌類様であるが菌類ではなく菌類的生物であるとして「卵菌類」に分類されるべきであると考えられるようになってきています。
防除剤のなかには、適用対象病害が主として担子菌であったり、べと病・疫病であったりするなど、ある特定の微生物群に有効な薬剤があります。植物病原菌の分類上のおおまかな位置づけを知っておくことは、適切な薬剤防除に役立ちます。

細菌

細菌は、一般的には大きさが1~2μm程度の単細胞からなる微生物で、顕微鏡を用いなければ個々の細胞を見分けることはできません。しかし、肉眼では見えない細菌でも、植物の細菌病菌は、感染部分で大量に増殖することが多く悪臭を放つ場合もありますので、それを目印にすると細菌病であるかどうかを確認することができます。例えば、イネ白葉枯病は、病斑部と健全部の境界付近で切除し、それを試験管の水の中に入れておくと導管部から大量増殖した細菌が噴出し水が僅かに白濁します。細菌病としては、青枯病、軟腐病、斑点細菌病などがあります。日本ではこれまでに、約180種の植物病原細菌の存在が報告されています(日本植物病名目録第2版;2012年。旧命名法による菌種含む)。

ファイトプラズマ

ファイトプラズマは聞きなれない名称でしょうが、細菌に近いが細菌とは異なり硬い細胞壁をもたないためいろいろな形をとる微生物です。これまでウイルス病と考えられていたイネ黄萎病や各種てんぐ巣病の病原体がファイトプラズマであることを、東京大学の研究グループが1967年に世界で初めて証明しました。ファイトプラズマは、植物細胞内や媒介昆虫の各種組織で増殖するが人工培地上では増殖しない、抗生物質テトラサイクリンに感受性であるなどの特徴をもっています。さらに、ファイトプラズマは、ウイルスとは異なり自己増殖する機能をほぼ保持していると考えられています。

ウイルス

植物病原ウイルスは、核酸(多くは1本鎖RNA)とそれを包む外皮蛋白質(殻)から構成されます。また、自己増殖できないため宿主植物の機能の一部を借用して増殖します。植物病原ウイルスは、植物に自分で侵入する機能をもたないので、昆虫・土壌微生物による媒介や感染した植物の栄養繁殖(球根、挿し木など)などにより感染・伝染します。芽かきなどの農作業によっても感染します。日本ではこれまで約300種の植物ウイルスが報告されています(日本植物病名目録第2版;2012年)。ウイルスに感染すると葉が黄色・緑色の入り混じったモザイク症状を示したり、矮化(わいか)や縮葉して奇形となります。まれに、チューリップのように花に斑(ふ)入りの模様をつくり、それが見た目に美しくなるので商品価値を高めることがあります。

ウイロイド

ウイロイドも聞きなれない名称ですが、1967年に米国でジャガイモやせいも病の研究から発見された最も単純な病原体です。ウイロイドはウイルス様のもの“like(-oid) a virus”として名づけられましたが、ウイルスと違って蛋白質の殻を持たず、裸の低分子環状1本鎖RNAのみから成り立ちます。日本では約20種のウイロイドが報告されており、ホップわい化病、リンゴゆず果病など主に栄養繁殖する果樹・多年生植物に感染し発病させます。ウイルスと同じようにウイロイドは、接木や剪定鋏(はさみ)に付いた汁液により容易に伝染するので、農作業や感染植物の取り扱いには注意を要します。

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