梅原博士の美味しい米作り講座

日本の米作りは、規模の大小があるものの稚苗による機械移植栽培を中心とした、機械化体系がほぼ確立されつつあります。稲作管理面では低コスト化を目指し、機械や施設の効率化・省力化にポイントがおかれています。そのため、本来、技術の中心となるべきイネの生理や生態が軽んじられる傾向にあり、手抜きも見られています。小さな手抜きやミスにより大損害を受けた育苗施設の事例もあります。 皆さんの目指す低コスト稲作は、 失敗や被害は許されないはずです。手抜きとならないように、基本技術を、現場に利用できる情報として提供できればと思っています。特に「若手の農業技術指導者」、「団塊の世代で新しく米作りに挑戦しようと意欲に満ちた方々」に参考になれば幸いです。

1.良い種籾を作るために

優良な種子とは、
(1)品種の特性を正確に保持し、他品種や雑草の種子、夾雑物の混入がないこと
(2)籾が充実しており、発芽率が高く、揃いが良いこと
(3)病害虫の侵害を受けていないこと
などが挙げられます。
毎年、種子更新されている場合は、各県の種子協会が責任をもって、これらの条件を満たした種子が提供されており安心です。
ここでは、自家採種しようとする場合の注意点を述べましょう。
まず、採種圃の立地としては、風通しが良く、水利や排水の良い場所を選びましょう。自然交雑を心配して、谷あいに設置されている場面を見たことがありますが、風通しが悪く、日射量も少なく、病害虫の発生も多くなり、好ましくありません。

(1)品種の特性保持

自家採種においても、初年度は購入種子を用い、3年を限度としましょう。それ以上続けると、遺伝的にも劣化します。特に、採種圃が小さい場合、その危険性が大きく、共同生産する方法も考えてみましょう。また、補植は行わず、異茎株(草丈や熟期の異なる株、発病株など)をこまめに抜きとることが大切です。前年、晩生種の跡では、漏生籾が発芽しても、抜きとりを見のがす場合があり、除草剤でよく退治するか、前作と同じ品種を配置すると混種防止に効果が高いです。(早生種は年内に発芽枯死します。)

(2)籾が充実し、発芽率が高いこと

倒伏を避けなければなりません。一般栽培に比較して、基肥量は若干少な目に、穂肥の多施用は倒伏のほか、籾品質を劣化させます。特に、登熟歩合や千粒重を低下させ、その結果発芽率を低下させることになります。水管理は一般栽培と同じですが、落水を早めないように気をつけたいものです。
刈取りは種子専用コンバインを使用することが重要です。高価ですので共同利用が望ましいでしょう。一般用のコンバインは回転数が高く、衝撃が強いため、籾の損傷率が高く、発芽率が低下します。また、発芽率を低下させる要因として、刈取り時の籾水分が重要な関係を持っています。立毛中の籾水分が25%以下になってから刈始めることが大切で、朝露が完全に消えてからの作業開始が望ましいでしょう。刈取りの適期は、圃場全体の黄化が90%以上になった頃を目安とします。生育の遅れとなる水口付近は別刈りとし、均一な籾としたいものです。
乾燥機は清掃が容易で、残留籾を完全に除ける種子用専用機を利用したいものです。一般の機種は分解が困難で、残留籾の完全な除去はむずかしいです。異種混入は刈取り、乾燥の作業の間に大部分発生するので、特に注意すべきです。
また、生籾を長時間堆積すると発芽率が低下します。刈取りから乾燥(通風)開始まで、4時間以内を守りたいものです。特に、高温時の刈取りとなる早生稲では短時間の堆積で穀温が上昇するので、注意が必要です。籾乾燥は、45℃以上で発芽率が低下するので温度管理に注意が必要です。出来れば、40℃以下を保ちながらの乾燥は種籾として良い条件です。

正常籾

(3)病害虫の侵害がない

種子伝染する、いもち病、ごま葉枯病、ばか苗病、もみ枯細菌病、褐条病およびイネシンガレセンチュウについては種子消毒を完全に行い、スタートしましょう。
本田に入ってからの発病防止は、予防的にいもち病、白葉枯病および、もみ枯細菌病に効果の高い、オリゼメート粒剤の施用が効果的でしょう。特に、出穂期まで、発病を抑え、菌密度の低い環境で出穂させることが採種のポイントとなります。

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