梅原博士の美味しい米作り講座

日本の米作りは、規模の大小があるものの稚苗による機械移植栽培を中心とした、機械化体系がほぼ確立されつつあります。稲作管理面では低コスト化を目指し、機械や施設の効率化・省力化にポイントがおかれています。そのため、本来、技術の中心となるべきイネの生理や生態が軽んじられる傾向にあり、手抜きも見られています。小さな手抜きやミスにより大損害を受けた育苗施設の事例もあります。 皆さんの目指す低コスト稲作は、 失敗や被害は許されないはずです。手抜きとならないように、基本技術を、現場に利用できる情報として提供できればと思っています。特に「若手の農業技術指導者」、「団塊の世代で新しく米作りに挑戦しようと意欲に満ちた方々」に参考になれば幸いです。

13.後期の圃場とその周辺の管理

本田の後期作業は高い品質の生産に向けた、最後の仕上げの管理です。

1)穂肥

施肥の項で、生育全般にわたる施肥量等の概要を述べてきました。その中で、近年、穂肥量を含めた、穂肥一発施肥(速効性肥料+肥効調節型肥料の混合による同時施用)技術が実用化されています。
この方法は、穂肥の2回施用を1回で、省力的に施用する技術で、速効性肥料と緩効性肥料、さらに有機性肥料が地域に適合された配合割合で作られており、地区の情勢などを参考に使用ください。
一般に、穂肥は適正な着粒数と登熟向上に向けた、健全な地上部と活力のある根の確保に必要です。このため、適期に、適量を使用することが極めて大切です。施用時期が早いと、一穂着粒数が増加しますが、桿が伸び、止葉が長く、倒伏しやすく、受光態勢も悪くなり、結果として、登熟が悪くなります。逆に、遅いと、着粒数不足をきたし、精米中の蛋白含有量が高く、食味を低下させる原因となります。
このことから、適期は、たとえば、コシヒカリでは出穂15日前頃が第1回目の穂肥の時期です。この時期は幼穂形成期(主稈の幼穂が約2mmの頃)後、約7~10日目に当り、幼穂長は約15mmに成長した頃です。適量は10アール当り、N成分で約1.5kgです。
第2回目は、その7日後で、同当り、1.5~2.0kg程度です。この時期の施用量は地域や田植の時期、品種などにより差があり、地区の指導情報を十分参考にしてください。その上で、圃場1筆毎に、若干の差があり、さじ加減の工夫も大切です。
また、気象経過や前作の関係などで、幼穂形成期の葉色(富士カラー、葉色値)が基準3.5以上のやや濃い場合、施用時期を数日遅らせたり、施用量を0.3~0.5kg程度に減らすことも大切です。さらに、葉色が濃く、草丈が伸びている場合は、出穂10日前の1回施用のみとし、種類も速効性肥料を用いるなど、倒伏防止に工夫が必要です。

2)水管理

後期の水分ストレスは登熟への影響が大きく、収量だけでなく、玄米の光沢不良、乳白米など未熟粒の増加につながります。また、倒伏軽減にも大切で、刈取り1週間前まで、十分に、土壌中の水分が保持されるように努めてください。この時期は台風の襲来も多く、これによるフェーン現象の発生や異常蒸散などが発生しやすく、その対策も考えながら水管理したいものです。

3)畦畔除草

コンクリート畦畔は別として、一般の土畦畔は雑草の天国です。雑草の種類は地域によって差がありますが、水田土を利用している関係上、農道に比較して、種類が少なく、比較的単純な構成で、メヒシバなどが優占種となっている場合が多いと思います。
除草の目的は、収穫時に、異物混入の防止、作業の安全確保、稲穂カメムシのうち、歩行性カメムシである、トゲシラホシカメムシ、コバネヒョウタンナガカメムシの棲息地を排除することなどから重要です。
このため、除草作業は、梅雨時、出穂前、収穫前の3回程度の草刈が行われてきました。近年、手抜きの方向になって、出穂前の1回のところが多くなっていますが、いずれにしても、雑草の種子が稔らない前に実施したいものです。

雑草中のトゲシラホシカメムシ幼虫
右上:トゲシラホシカメムシ成虫

除草剤による畦畔除草

除草の方法としては、草刈機の利用が主流ですが、一部、除草剤の生育期処理剤の利用もみられます。省力的で、抑草効果も大きいのですが、使用上、注意すべき点もあります。
それは、雑草茎葉散布剤となっているため、当然のことながら稲にかけないことが大切です。また、散布時期、回数、濃度などを厳守することが大切です。
一部の剤では、根も枯らすことから、畦畔が崩れやすいので、土性によって使い分けることも大切です。
また、後述する枯死葉上に、褐色米の関与菌が異常繁殖し、胞子の飛散源となる場合があり、注意する必要があります。
使用薬剤は、ビアラホス剤(ハービー液剤)、グルホシネート剤(バスタ、ハヤブサ)、グリホサートアンモニウム塩剤(ラウンドアップハイロード)、グリホサートカリウム塩(タッチダウンiQ)、グリホサートイソプロピルアミン塩剤(ポラリス)、ジクワット・パラコート剤(プリグロックスL)、DCMU・DPA・MCPAナトリウム塩(ポミカルDM)などがあります。
いずれも、使用前に注意事項をよく読んで使ってください。

枯草上の胞子形成

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