梅原博士の美味しい米作り講座

日本の米作りは、規模の大小があるものの稚苗による機械移植栽培を中心とした、機械化体系がほぼ確立されつつあります。稲作管理面では低コスト化を目指し、機械や施設の効率化・省力化にポイントがおかれています。そのため、本来、技術の中心となるべきイネの生理や生態が軽んじられる傾向にあり、手抜きも見られています。小さな手抜きやミスにより大損害を受けた育苗施設の事例もあります。 皆さんの目指す低コスト稲作は、 失敗や被害は許されないはずです。手抜きとならないように、基本技術を、現場に利用できる情報として提供できればと思っています。特に「若手の農業技術指導者」、「団塊の世代で新しく米作りに挑戦しようと意欲に満ちた方々」に参考になれば幸いです。

16.収穫~乾燥調整

昨今の米の自給のアンバランスに由来した現象により、市場は高品質米を強く求めています。また、検査の目も厳しい現状にあります。生産者は最後の仕上げに当り、品質を低下させる要因を出来るだけ排除する技術を駆使し、商品性の高い産米に仕上げる必要があります。

1)適期刈取り

刈取り適期は、以前より、出穂後の日数(登熟日数)で、早生種は35日頃、中生種は40日頃、晩生種は50日頃とみられてきました。同時に、地域、品種、気象、肥培管理等によって左右されることもよく知られています。
近年、気象変動の幅が大きく、刈取りの目安をたてるのも、難しくなっている現状です。このことから、精度の高い刈取りの適期の把握が極めて大切です。

(オリゼメートフォトコンテスト入選作品より)

刈取り適期は登熟期間の積算温度と密接な関係が認められています。たとえば、コシヒカリで、1050℃で、標準偏差も小さく、出穂期が決まれば、平均気温より、刈取り時期の予測が可能です。しかし、本年のように、8月に異常高温が続いた場合、誤差が大きくなります。
簡便で、作業計画に利用しやすい判定法の一つを紹介します。
穂を上、中、下の3部位に分け、籾の黄化を基準とした判定法です。北陸地方のコシヒカリでは、(1)上中位の1次枝梗の黄化までの日数は30日~35日(黄化率50~70%)(2)下位の1次枝梗は35~40日、(3)上中位の2次枝梗は35~45日(黄化率85~90%)(4)下位の2次枝梗で40~50日であることがわかっています(図17参照)

図17.穂内における籾黄化順序(高橋ら1993)
注)図中の数字は黄化の順序を出穂後日数で示した。
1次枝梗数9本で1穂着粒数63~90粒の穂について調査した。なお、籾黄化の判定は大日本インキ化学工業(株)

刈取りの適期は(3)上、中位の2次枝梗の黄化を基準に判定することが精度が高いようです。(3)は(1)より7~10日後となるので、(1)が決まれば、刈取りの準備もふまえ、十分に間に合うでしょう。
注意点として、基準穂を圃場の生育中庸な場所、平均的な株(穂数15本以上)、平均的な茎(1次枝梗数8~9本着生)を選定することが大切です。また、この簡易な判定に、「刈取適期判定板」も作られています。
また、籾水分の変化からみれば、籾の乾燥重が最大に達する時期は、含水率で28~30%とみられ、この水分域ではコンバインの利用において、損傷籾の発生が多く、また、カントリーエレベータの荷受基準からみて、実用が不可能です。
コシヒカリの場合、籾水分26%が刈取りの始期で、晩限は積算温度1150℃(籾水分21%付近、年次変動大きい)程度と考えられます。この範囲より、早い刈取りは、収量、品質の低下のほか、玄米タンパク質、アミロース含有率の増加など、食味も低下します。
また、遅れた場合は、立毛中の胴割米が増加、玄米の光沢が悪く、品質の劣化、検査等級の低下へとつながります。特に、籾水分20%に達すると胴割米が急増します。

2)刈取り

手刈りやバインダーによる刈取りでは籾水分に関係ありませんが、自脱型コンバインでは、籾水分25%以下では損傷がありませんが、それ以上の水分で、扱胴や搬送部の回転数が高すぎると、籾の損傷を招き、玄米品質の低下につながります。
このことから、早刈は乾燥作業の水分ムラの原因ともなり、避けるべきでしょう。また、刈取時刻も、朝露が消えた、10時頃から開始すると安心です。

3)生籾の処理(貯留)

高水分籾を長時間堆積すると斑紋米(ヤケ米)が発生します。籾水分25%、籾温25℃、6時間
程度の貯留で変質が発生します。
特に早生種は高温条件で収穫されるので変質も早く、貯留時間を短く、乾燥機に入れ直ちに通風することが大切です。また、乾燥能力に見合った収穫が大切です。

高水分貯留による斑紋米(ヤケ米)、右:正常米

図18.堆積貯留時間と変質米・茶米の発生率
注)変質米:玄米に斑紋が認められるもの(富山農試 1996)

4)乾燥

人工乾燥が普及して以来、米の食味が劣ったと言われています。それは、乾燥機の利用にあたり、効率を上げるため、送風温度を高くしたり、初期籾水分が高いことが主たる原因のようです。
乾燥による食味の低下は、呼吸代謝や各種加水分解酵素による脂質の分解、高温による還元糖量の増加やアミラーゼ活性の減少などが原因と言われています。
この進行には、籾水分が高いほど、殻温が高いほど、しかも時間が長引くほど著しくなります。乾燥機の利用にあたって、このことを理解した上で、作業することが大切です。
籾温度の許容上限は、乾燥中に発生する胴割れ率、発芽歩合(活力)、光沢など品質保持からみた場合、35℃程度と考えられます。また、食味からみた場合、39℃以下が望ましいようです。
このことから、乾燥作業にあたって、籾の初期水分を低く、乾燥速度(毎時乾減率)を小さくし、さらに、生籾を18%程度まで乾燥した時点で一時中断し、一次貯留後に再び乾燥、仕上げる休止乾燥法(二次乾燥法)が有効です。
特に循環式乾燥機を利用する場合は、初期籾水分を22%以内、送風温度55℃、26%の時は48℃に、そして、これより低い温度で乾燥することが大切でしょう。
仕上げの玄米水分は14.5~15.0%にします。14.0%以下の玄米を過乾燥米と位置付けられ、玄米品質及び食味が劣ることが明らかになっています。

図18.堆積貯留時間と変質米・茶米の発生率
注)変質米:玄米に斑紋が認められるもの(富山農試 1996)

過乾燥米は乾燥工程に多くの時間と経費を費やす他に、消費者に望まれないとなれば、是非避けたいものです。
この範囲に収めるには、再乾燥(玄米水分17~18%)後は乾減率を0.8%/h以下(一般に、常温+5℃)とし、17%を切ったら、乾燥を終了し、冷却循環を行います。水分測定を15~20分毎に行い、所定の水分に仕上げます。この場合、水分計は毎年定期検査を受けた正確なものを用いることが大切です。
失敗例の多くに、水分計の不備(誤差も含め)があります。もう一点は、検定試料に青米(水分が高い)の混入割合により、乾燥機停止後に、玄米水分が変化します。一般に、100粒中に青米が6~10粒混入の場合(停止時に14.5~15.0%)、その後もほとんど水分は変化しませんが、0~5粒の場合、乾き、11粒以上の場合、逆に水分が戻りますので注意したいものです。

(オリゼメートフォトコンテスト入選作品より)

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