いもちの素性を知る

第4章 いもち病の被害解析

2. 節いもちの罹病と稔実

節いもちに関する研究は、葉いもちに比較して著しく少なく、わずかに小野小三郎氏によって病気の進行(外部形態)などが明らかにされているにすぎない。同氏は研究が少ない理由として、稲作後期のいもち病は実験まで2~3ヶ月も待たねばならぬこと、ポット、框試験に依存することがあって、その管理に苦労すること、葉いもちほど表情が豊かではなく、病微変化に乏しいことなどをあげている。節いもちの特徴は、節部から折れること、それによって節から上位が早く枯死し、穂の稔実が阻害されること、収穫前に地上に散乱することなどが経験的に認められるところであり、年によっては節いもちの発生で大きな被害をこうむることもある。

節の部分は本来いもち菌の侵害に弱いところである。節が葉鞘に包まれているときにも、この葉鞘内で感染するし、葉鞘から外に抽出した後でも直接菌の侵入をうけて発病することもある。

2章3、1)、(5)では節いもちの発生経過を図示してある。それによると節の部分に黒色秒斑が現われ、これが次第に拡大して節の周囲全部が黒変し、ここから折れるようになる。折れかたはその方向がまちまちであるから、昔手刈りの場合にはずい分と苦労したものであった。

さて、この節いもちの罹病と稔実との関係についての検討も、東北農試(大曲市)で勝部氏により系統的に行われたので、その概要を紹介する。

1)感染時期、部位と稔実

出穂当日から5日間隔で30日まで、上(第1節)と下(第2節)の節に菌を接種して発病させ、発病率と枯死率の消長とそれに伴う稔実障害について調査した。その概要は次のとおりである。

  1. 潜伏期間(節いもちの接種から発病までの期間)は上節と下節で異なり上位節で長い傾向を示す。出穂当日接種は上、下節とも同じで短い。出穂5日、10日後接種で長くなり、その後の感染でやや短い傾向を示すようである。罹病期間(接種から桿の枯死までの期間)もほぼ同様である。
  2. 節の罹病による稔実の阻害は、出穂当日は顕著で、登熟籾が殆ど得られていない。これに対し15日以降接種では無摂取と大差のない登熟歩合で、その影響はみられていない。表からみると、出穂後10日めまでの感染が登熟に響いているようにみられる(表8)。
  3. 上節は下節よりも潜伏期間は長いが、罹病期間は逆に上節は短いので、ともに同じ時期の感染であれば、枯死する時期は同じであるという。

2)重複感染と稔実

上、下節に重複感染した場合の被害はどうか、各単一感染と比較している。

  1. 上、下節の同時(重複)発病は病勢進展が早く、潜伏期間が短い。さらに桿の折損も早い(短期間)。
  2. 出穂当日から3日間隔で接種して、稔実状態を重複、単一感染で比較すると、登熟歩合は出穂3日後接種までは重複感染で影響が大きい。しかし、それ以降では差がない。単一接種では、上、下節に差はみられない。

3)節いもちと稈の折損

罹病節が折れやすいかどうかを測定するのには、桿の上部に重量を加えて調査する「挫折重」を指標とした。そして、桿の太さを考慮して算出した挫折重指数(挫折重/桿直径A、又は、桿断面積B)を求め、それらと節の罹病度(節断面積と病斑面積率)との関係を節位別、葉鞘の有無、本田、ポット別栽培などに分けて調査している。

その結果、いずれも高い負の相関関係が見られるから(Aで平均-0.785**、Bで平均-0.862**の相関関係)、節いに伴って、桿が折れやすくなっていく様相が数量的に確認されたとしている。

そのほか自然条件では、葉鞘による節部の抱擁(よう)支持も無視できないことを強調している。

罹病節の折損と風の関係について、発病後に0.05~3.0m/sの風を毎日2時間当てて、その節からの折損率の推移も調査しているが、上節、下節ともその影響は認められない。むしろ風による稲体の乾燥とか、風速の変化、風向など多くの力学的な検討が必要であろうと考察している。

さらに折損防止対策として、罹病桿を結束(支持)した場合にどの程度登熟歩合を向上できるかについて検討した。

接種を出穂当日から3日間隔で9日から4回にわたって行い、結束、放任、対照(健全)各区の登熟歩合を完熟期に調査した。

それによると放任区では接種が出穂日とその3日後(即ち早い感染の場合を示す)で登熟歩合の低下が顕著である。それに対し、結束した区では同様早い時期の感染(出穂当日と3日後)で低下がみられるが、その程度は放任区よりも軽い結果となっている。このことから稔実にみられる被害は、早い感染時ほど結束して折損を防止すれば10%以上(放任区;0日対1、3日9、支持結束;0日15、3日18・・・いずれも指数)もそれを軽減できる場合があると考察した。

節いもちの被害は、単に稔実の阻害にとどまらず、後期(収穫期に近いほど)ほど穂が重くなって罹病節からの挫折、切損が多くなり、「ちぎれ」「落ち穂」となって収穫ができないことから、減収、被害となって現れてくる。

今日では機械刈りがそのほとんどであり、機械の刈取り性能も著しく高いので、手刈り時代における節いもちの評価と同一には論じられない面もあるが、早期の感染は登熟阻害が顕著であるから、出穂直後、穂揃1週間後の穂いもち防除の実施によって、節いもち同時防除の実効をあげなければならない。

表8 節いもちの接種部位ならびに接種時期と稔実との関係(勝部 1966)

注)数量は各時期の対照を100とした登熟歩合の指数。
  同一英小文字付した数値間に有意差(0.05)はない(多重検定)。

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