いもちの素性を知る

第5章 病原菌のレース

1. 病原性の分化

病原性というのは、病原菌が宿主植物(ここではいもち病菌Pyricularia Oryzae CAVARAとイネ)に病気を起す性質、能力をいうと定義される。病原菌の病原性はイネの抵抗性と相対的に表現されるから、イネ側の品種や苗齢、環境条件などを一定にして(この条件がまちまちであると、同一菌株であっても発病程度が乱れる)、種々のいもち病株を接種した場合に、発病程度の高いものを病原性の強い菌株であり、発病程度の低いものは病原性が弱い菌株だと言うことが出来る。

そして、この病原性の差異には2種があって、1つは病斑の数や大きさ、罹病葉(穂)率など数量的に強弱を比較できるもの、2つはいもち病に罹るものと罹らないものとの対比で、質的な病原性の差であるとする。このように病原性の差は数量的、質的な2面が存在するというものである。

ところで多くの植物病原菌は、宿主の品種に対して前述の病原性を異にする系統があるのである。例えばイネの品種Aに対して、これを強く侵していくいもち病菌aと、これと同じ条件下で接種しても発病しない菌bとが存在する。この現象を病原性の分化と呼び、その菌系統をわが国ではレース(Race)と一般に呼んでいる。別に菌系、菌型、生態型の用語も用いられている。

この病原性の差異が存在することは、直接いもち病防除の可否、効果に関する重要な問題であって、古くから注目されてきたところである。

いもち病を防除する場合に最も経済的な手段として考えられるのは、抵抗性品種の利用であろうが、病原性の異なるいもち病菌の系統があると、抵抗性品種の育成と普及に関する戦略に根本的な検討が必要となってくる。

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