いもちの素性を知る

第6章 発生予察

イネいもち病に関する研究の業績は、イネの他病害はもちろん、他作物のそれに比較してみて、研究の歴史、研究の規模、人員、内容等すべての点で圧倒的に多い。

いもち病発生の場面だけにしぼってみても、多発生の詳細な記録とその解析、病原に関するもの、侵害されるイネの抵抗力、両者の抗争をとりまく環境条件など多岐にわたっている。それらの業績をひもといてみるとき、多発生や早期発生などの条件、イネの被害、防除のあり方の問題等が明らかにされてくる。少なくとも各県単位には過去の多、少発生の記録、経過、条件解析等の成績が存在する。それらを検討すると発生時期、量、推移などの相互条件や条件(法則性)を知ることができるから、これらに加えて当年の現地の発生調査、イネの生育、気象観測データ等で補強していくと以後の推移を予測することが出来るようになる。

その結果から防除の要否、時期、方法、緊急度など現地が適期に、経済的に防除するのに役立つ情報を提供する。このシステムが病害虫発生予察事業である。

わが国においていもち病の発生予察事業が組織化されたのは古く、第二次大戦中の1941年であるが、今日のように全国が一定規格の実施要領によって進められるようになったのは、1950年の植物防疫法の制定と、1951年の同法改正によってからであり、農作物有害動植物発生予察事業としてスタートした。

都道府県における病害虫防除事業を効率的に実施するための病害虫防除所が設けられたのは、岩手県では1952年7月1日付けであり、県内に15ヶ所設置されたのものである。各県とも同様の経過で設置されている。現在では原則として1県1防除所の体制となっているが、いずれにしても作物病害虫の発生予察業務を担当する唯一の公所である。

さて、古くから実施されているこの発生予察事業の中において、いもち病に関しては概略次のようにして行われているので、参考までに記述する。

1. 予察担当者と調査事項

予察事業を担当するのは国においては農水省植物防疫課で、農業研究センターをはじめ全国の地域農業試験場等研究機関と連携をとりながら事業を推進している。

都道府県では県庁の担当部署が事務をとる他、実際の調査等を実施する専門機関として病害虫防除所が、そしてこの専任職員が職務に当っている。また、都道府県では病害虫防除員を委嘱(市町村職員、農業協同組合営農指導員など)して、調査や情報の提供など事業の効率化をねらっている。

病害虫防除所においては次のような調査を実施している。

調査圃場; いもち病発生予察圃、防除適期決定圃(定点調査圃)、一般圃場(巡回調査と発生程度別面積集計のサンプリング等に使用)。
調査事項; いもち病菌の胞子飛散状況、発生状況、イネ生育状況、イネのいもち病感受性(体内N濃度調査など)、気象状況等いもち病発生予察に必要なすべての事項。

2. 予察方法

各府県において蓄積した調査試料から予察方法を確率し、それに基づいて予察を行う。

気象経過と今後の予測、作付品種の実態、施肥法等にも十分配慮しつつ、隣接県との情報交換も行いながら高精度の予察に心がけている。予察法の具体的内容は別に述べる。

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