いもちの素性を知る

第6章 発生予察

4)複数要因を組合せた予察方法

いもち病発生の多少を決める要因は、宿主であるイネの抵抗力の強弱、病原菌の攻撃力(病原性の強弱、レースとも関連する)、環境によって支配されることはこれまでにも述べてきた。

したがって、そこに育成するイネが今後どのようないもち病発生の経過をたどるのか、それを事前に(少なくとも防除適期までに)予測するためには上記の3要因についての相互の関連を出来うる限り詳しく、正確に調査していく必要がある。つまり、発生予察の精度を高めるためには単一な要因ではなしに、発生に関係する多くの要因を可能な限り取り込む必要があり、その要因の選定、組み合わせ、発病に対する影響の程度などを予測式に組立てていくことが大切である。また単に最終段階の発生度を示すものではなく、時々刻々の病勢変化を推測できるものであれば発生予察上いっそう利用価値が高いものとなるであろうから、今後関係者の努力を期待したい。

これらに関する業績を簡単に紹介する。

(1)伝染源量とイネ感受性を組合せた穂首いもちの予察

前に述べたように、堀真雄氏は止葉の珪化度と穂ばらみ期の株当たり総病斑数(葉いもち)の2要因を組合せて穂首いもち発病率を予察すると単一要因よりも的中度が高くなった。

(2)伝染源量と侵入環境を組合せた葉いもちの予察

胞子の飛散量を測定し、これを予察に利用しようとした最初の試みは長野農試の栗林氏らによって行われたことは既に述べた。この胞子飛散量をそのまま予察に利用するよりはイネ体に付着した胞子数、さらにはそれからイネ体に侵入した胞子数を利用することの方が精度を高めるうえで有利であることは当然である。このような観点から金章圭、吉野嶺一氏9)らはイネ体への侵入可能な胞子数を次式のように算出した。

この侵入可能胞子数の算出に当っては、回転胞子採集数、結露計によって測定した葉面ぬれ時間、風速、気温等の調査結果を用いて行い、推定侵入胞子数とその累積値から病斑数を計算した。その結果、病斑の推定値は実際の発病調査とかなり一致し、今後基礎的な調査をさらに進めることによって、一層精度を高めうるものと述べている。

吉野氏24)はさらに検討を重ねた結果、毎日の侵入量の計算実例を示した。その算出基礎としては、伝染源量×イネの生育時期別侵入率×侵入比として毎日の侵入量を求めている。

(3)伝染源量、侵入環境、イネの感受性を組合せた葉いもち、穂いもちの予察2)

侵入する病原と宿主の感受性、及びそれらをとりまく環境の三大要因を組合せて予測する方式である。本病の発生生態に基づいて各要因を一定の尺度で数値化し、これを総合化して予測式を組立てたもので本病の発病度を5~7日ごとに予測し、病勢進展様相として示したものである。

a.葉いもち病斑数とその病勢進度の予測式

予察時期は7月上旬~8月上旬とし、7日ごとに行う。

b.穂いもち発病穂率とその病勢進度の予測式

予察時期は出穂2日前から5日ごとに行う。

青森県において本予察法の的中度合は、年次、品種、施肥量が異なる条件下でも実測値とほぼ一致し、また病勢の進展様相とも概ね一致するという。

千葉末作氏は既述の葉鞘接種法によるイネ体のいもち病感受性検定の試験に力を注ぎ、精力的にその実施に当った。その成果から葉いもち侵害率、病原力指数、穂いもち侵害力指数にこの葉鞘接種による進展度を活用し、上記の葉いもち、穂いもちの予察式に使用している。

葉鞘検定法によるイネ体の葉いもちの侵害抵抗力と、さらに穂いもち侵害抵抗力にまでこれを利用して予察式導入を試みたのは千葉市が最初である。

●参考文献

  • 2)千葉末作 青森農試研究報告 27(1983)
  • 9)金章圭ら 日植病報 41.5(1975)
  • 24)吉野嶺一 北陸農試報告 22(1797)

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