いもちの素性を知る

第6章 発生予察

5)シミュレーション予察

コンピュータの普及に伴って大量の情報が短時間で容易に処理できるようになった。発生予察分野でも、被害状況、気象データ、発生相の地域区分などにコンピュータが利用されるようになってきた。しかし、発生時期、量を予測する手段としては、入力するデータの種類や重みづけ、相互関係などとともに、病原菌、宿主、環境の発生動態を数量的に表現する処理手段を数式で示した予測モデルをどのように構築していくかが問題となる。背景には綿密な生態的な解明とともにその資料集積が必要不可欠であるから、今後その視点にたった研究とデータ集積に期待しながら、シミュレーション予察の展開を待ちたいと思う。

福島農試の橋本晃氏ら3)は、葉いもちの病勢進展をイネの生育経過、抵抗力変動、いもち病菌の動向、気象要素の相互関係から追跡するコンピュータのシミュレーション・モデルを作成した。

モデルの要因関連図とその実行に必要なデータとパラメータは図5と表6に示したとおりである。このうち気象条件はアメダスの観測値と水田畦畔に設置した結露計で得たデータを使用している。また、イネ生育特性、栽培条件、胞子飛散特性は経験的に推定される暫定値を入力している。

モデルではこれらの入力値に基づいて、イネ主茎の葉齢と株当りの葉面積の変化を日別に算出、次いでこの葉身に初期病斑が伝染源となって同一株上でふえていく葉いもち発病量を算出した。いもち病菌の生活環に沿った感染から病斑形成と胞子形成、飛散までの流れの量的変化を3時間または1日経過ごとにそれを葉位別に演算して、それからイネ抵抗力変動、胞子動向、感染量、葉位別病斑数、病斑面積率等の経過を日別、時刻別に求めたものである。

その結果、この方法は病斑の潜伏期間に相当する約7日間の短期予察に対しては確定的な資料が得られ、初発生の推定、進展量の測定には有効であるとし、長期予察に対しても通常の気象経過を前提とすれば発病量の範囲を示すのに役立つとしている。

根本文宏氏ら14)はその後、福島県で葉いもちが多発した1991年にこのシミュレーション・モデルの適合性について検討し、このモデル利用の発生予察結果から葉いもち適正防除について試験した。

その結果、葉いもち発生経過の予測はほぼ的中し、また、それに基づいて葉いもち全般発生期に薬剤散布を行ったところ、慣行散布に比較して高い防除効果が得られたと報告した。

青森農試の太田恵二氏ら16)も福島農試と同時期にシミュレーションプログラムによる葉いもちの発生予測を試みている。

いもち病の発生から終息までのフローチャートを作成し、病原菌と環境、宿主間の相互関係についてのデータを数量化し、シミュレーションプログラムを作成した。

処理結果から各年次ごとに葉いもち病斑数をもとめているが、この数値(計算値)と実測値を比較して、その適用性の状況を検討している。具体的には1973年から’76年まで4ヶ年と1979年から’81年まで3ヶ年について品種ふ系69号とムツホナミ、レイメイを材料として検定した。

その結果から計算値と実測値の間には時期的推移でみると必ずしも一致しているとは言切れない点がみられるので今後さらに検討を重ね、精度を高めるための努力が必要であろう。

●参考文献

  • 3)橋本晃ら 北日本病虫研報 33(1982)
  • 14)根本文宏ら 北日本病虫研報 43(1992)
  • 16)太田恵二ら 北日本病虫研報 33(1962)

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