いもちの素性を知る

第7章 いもち病の防除

6)新しい薬剤施用法の展開

米をめぐる環境は新しい食糧法の施行とともに変化し、生産、流通両面から大きくその転換が迫られている。生産面からみると、低コスト生産が命題だから、必然的に省力化、良質化(良食味生産)、生産安定化等が求められる。生産安定化のため必須技術であるいもち病防除の面でも、発生予察精度の飛躍的向上を背景にして、防除が必要な場合にはそれを断固として実施しなければ前記の目的は達せられない。いっぼう高齢化の進行から、これまでのような重い散布装備では作業が困難となってきたことも無視できない現実である。

このような背景から関係メーカ一を中心にして、防除効果を低下させることなく、手軽で簡便な散布処理方式の開発に努力が続けられているのであるが、その具体的内容の一部について開発スケジュールにのぼっている点だけを紹介してみよう。

(1)箱処理剤の開発

田植直前に育苗箱で育成している苗に薬剤(粒剤)を散布(大半は手まき)して、本田で加害するイネミズゾウムシ、ドロオイムシ等の防除を行う方式はすでに実用化してから久しい。この方法でいもち病を防除しようとする試みもここ数年来活発になってきた。例えばオリゼメート普及会を結成している明治製菓(株)と北興化学工業(株)では、本田における葉、穂いもち防除効果を検討している。すでに各地域毎の成績検討会も済み計数整理のうえ1997年1月に登録申請しているから、近い将来には箱処理法によるいもち防除が実現するものと期待される。

東北地方では一部苗いもちの感染、発病による異常早発はあるものの、大部分は移植約1ヵ月後の6月下旬ごろから葉いもちの広域的発生がみられるから、それまでに稲体への吸収移行を終え、やがて出穂後の穂いもち感染期まで有効成分が残存して、葉いもち、穂いもちともこの箱処理の1回旋薬によって防除しようと理想を描いている。そのためには有効成分量、施用量、施用時期、薬効の持続性、培土条件等基礎的な面と地域性なども配慮した多面的な検討が必要であろう。そのほか葉いもち防除効果の高い薬剤特性を生かして、穂いもち防除のための航空散布との組合わせによる広域使用では疫学的にも効果の向上が期待できる。穂いもち散布回数を減らす可能性は十分にあると考える。

(2)側条施用剤(粒上、ペースト)の開発

省力化のための側条施肥田植機も実用化しているが、これにいもち防除剤を登載して、施肥と施薬を同時に行い、その後の追肥や薬剤散布を省略しようとする試みである。すでにオリゼメート粒剤を使用し、乗用型田植機にセットしていもち多発年に試験した(1993~1994年)。その防除効果は極めて高く、本法が有効であることは実証済みとなった。需要動向を十分把握して対応することは当然だが、今後機械と剤型面からの若干の改善が必要かも知れない。

(3)パック材、1キロ剤の開発

小さな区画の水田では、畦畔の上からパックした薬剤を投げ込み、水田には入らず薬剤を施用しようとするもので、すでに実用化の段階に達した。また、除草剤にならって1キロ粒剤を散布し、省力化と効率化を図ろうとそるもので、これも実用化した。なおオリゼメートパック剤、オリゼメート1キロ剤とも1997年2月に登録された。

(4)その他の薬剤の処方

除草剤の方向にそった剤型の開発が一部から要望されているから、それに準じたものが期待され。例えば強い拡散性をもたせ畦畔に沿って散布することによって田面に広く拡散し、その後稲体により吸収、或いは付着により有効に作用するもの、除草剤で実用化しているフロアブル剤の拡散性をさらに強化したもの等省力化に視点をおいた剤の開発が期待できないか。また、これはいもち防除の単剤ではなく、紋枯病その他の防除剤との混用を目指すことにより、省力化のメリットはさらに増幅するものと思われる。今後の研究結果に期待しよう。

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