水稲研究最前線

伝染源排除による イネいもち病の効率的(減農薬)防除

秋田県農林水産技術センター 農業試験場
深谷富夫先生

おわりに

本田におけるいもち病の発生を阻止するためには伝染環を効率的に遮断する必要がある。そのためには乾燥状態で越冬させた稲残渣を水田周辺に持ち込まないこと、また、育苗施設からの本田への持ち込みを避けることが必須条件となる(図7-1)。

図7-1

しかし、これまで講じられてきた伝染源対策である種子消毒や育苗期防除の効果は完全ではない13)。しかも稲わらや籾がらは野菜・水稲の栽培資材や生活用品として活用されていたことから、稲残渣の処分も不完全であった。したがって、これまでのいもち病防除は被害軽減を前提としたもので、あくまでも本田防除に主眼をおいて対策が講じられてきた。しかしながら、現在では稲残渣の活用は非常に少なくなり、また、農薬メ−カ−の協力により持ち込みいもちの発生を最小限に抑えるMBI−D剤の低濃度・減量施用による育苗期防除法が確立された。さらに、防除の不備な水田からの伝染阻止や、育苗期防除の補いとしての予防粒剤、側条剤および箱施用剤による葉いもち防除を組み合わせることで、穂いもちの伝染源が排除され、穂いもち防除の削減が可能になった(図7-2)。

図7-2

本技術は普及初年目の2005年は県内の2割程度の水田面積で実施され、2年目の2006年には約5割に拡大し、同年の東北農政局発表のいもち病被害額が東北最下位となった(図7-3)。また、これまでは毎年のように注意報等を発令し、対応に苦慮してきたが、2006年以降は注意報を発令することもなく、穂いもちは少ない発生で終息し、伝染源排除技術の導入がいかに効率的で、減農薬に結びつける防除法であるかを実証できた。ただし、これまで用いてきたMBI−D剤は耐性菌の出現により防除効果の低下をきたし14)、2008年からMBI−D剤は使用できなくなり、防除基準から削除した。現在では育苗期防除剤にベノミル、オリサストロビン剤の使用体系に変更している。

図7-3 育苗期防除技術導入2年目の被害額は東北最下位

さらに、育苗期、本田防除を兼ね備えたオリサストロビン+プロベナゾール+フィプロニル(Dr.オリゼプリンスエース)剤には省力防除に有効な薬剤として期待している。

現在、育苗期防除に使用している薬剤はいずれも耐性菌出現の恐れがあり、本技術継続の障害にならぬよう種子生産等を含めた何らかの対策を講ずる必要がある。

秋田県では2008年から本技術を基盤とした減農薬栽培米生産を目指した「あきたecoらいす」プロジェクトが発足した(図7-4,5,6)。現在は農薬の特性を最大限に活用することで農薬使用量をさらに削減する効率的防除法を確立すべくチーム員頑張っている。

図7-4 「あきたecoらいす」プロジェクト2008年結成

図7-5 あきたecoらいすの基本防除体系例

図7-6 農業試験場プロジェクトの方針

引用文献

  • 1)小林次郎(1984):秋田農試研報26:1-84
  • 2)栗山数衛(1982):日植病報2:99-117
  • 3)三浦春夫ら(1975):北日本病虫研報26:36
  • 4)篠田辰彦(1958):植物防疫12:487-492
  • 5)小林次郎(1986):植物防疫40:429-432
  • 6)深谷富夫ら(1996):北日本病虫研報47:156(講要)
  • 7)深谷富夫ら(2001):北日本病虫研報52:11-13
  • 8)深谷富夫ら(2002):日植病報68:209(講要)
  • 9)糸井節美ら(1979):日植病報45:375-385
  • 10)小林次郎(1974):秋田農試研報19:41-85
  • 11)深谷富夫(1990):北日本病虫研報41:17-22
  • 12)加藤雅也ら(2004):北日本病虫研報55:37-39
  • 13)鈴木穂積・藤田佳克(1985):東北農試研報71:59-74
  • 14)佐々木直子ら(2005):北日本病虫研報56:205(講要)

PAGE TOP