免疫力を正常に維持するための方法
Q免疫力を正常な状態に維持するために、日常生活でできることを教えてください。
バランスの良い食事、適度な運動や十分な睡眠など、規則正しい生活を心がけることが重要です。
バランスの良い食事
免疫力を適切に保つための具体的な食べ物や食事は、科学的に証明されていません。しかし、年齢に応じて、適量かつバランスの良い食事を心がけることは非常に重要です。
2021年、日本国内の6つの国立高度専門医療研究センターが連携し、日本人の健康寿命を延ばすために必要な行動などを「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言」として公表しました。この提言では、特定の病気ではなく、がんや認知症、精神疾患などのさまざまな病気を横断的に予防するために、「喫煙」「飲酒」「食事」などの10項目に分けた予防のための行動などがまとめられています。
「食事」の項目では、具体的に以下のような食事内容を推奨しています。

- (注1)男性7.5g/日未満、女性6.5g/日未満(厚生労働省日本人の食事摂取基準)
- (注2)赤肉:牛・豚・羊の肉(鶏肉は含まない)
- (注3)砂糖や人工甘味料が添加された飲料
国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所
電子化医療情報を活用した疾患横断的コホート研究情報基盤整備事業.疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)
https://www.ncc.go.jp/jp/icc/cohort/040/010/index.html
がん患者さんにとって、食事でエネルギーや必須の栄養を摂取することは、体力をつけるためにも、免疫力を低下させないためにも重要です。一方で、病気そのものの症状に加え、治療に伴う副作用によって、十分な量の食事がとりづらくなることもあります。
食事について、「食欲がわかず、あまり食べていない」や「口やのどが痛くてうまく食べられない」などの具体的なお悩みを持つ場合は、栄養と食事を参照してください。
適度な運動
適度な運動はがんの発症リスクやがん治療後の再発リスクを下げ、治療の副作用や痛みなどのがんの症状を緩和するなど、さまざまな効果が知られています1)。
しかし、抗がん剤治療中など、がん患者さんの状況によっては運動を控える必要があります。さらに、がん治療などで不安を感じたり、気持ちが落ち込んだりすることで、健康なときより運動量が減ってしまうことが多いです。そのため、筋肉量や運動量の維持・改善を意識して、可能な範囲で動く習慣をつけることが重要です。
運動する際は、ご自身の体調や治療の副作用を考慮して行う必要があります。あらかじめ、担当の医師や看護師にどの程度の運動なら行えるかを確認するようにしましょう。
薬物療法や放射線治療の治療中・治療後に効果的な運動

国立がん研究センターがん情報サービス がんとリハビリテーション医療
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/rehabilitation/index.html
参考情報
- 1) 米国国立がん研究所:Physical Activity and Cancer
The website of the National Cancer Institute (https://www.cancer.gov)
https://www.cancer.gov/about-cancer/causes-prevention/risk/obesity/physical-activity-fact-sheet
十分な睡眠
睡眠は、単に疲れをとるだけでなく、免疫をはじめとしたさまざまな体の機能に大きな影響を与えています。睡眠不足は免疫細胞の数や機能、さらには免疫応答を引き起こすタンパク質であるサイトカインの分泌量に影響を及ぼし、免疫力を低下させることが知られています1)。また、睡眠不足の人は風邪を引きやすくなることがわかっており2)、睡眠不足によって免疫力が低下したことによるものと考えられます。
がん患者さんは夜中に何度も目が覚める、なかなか眠れない、朝早くに目が覚めてしまうなどの睡眠障害が起こることがあります。睡眠障害はがんの症状、治療による副作用や、不安といった精神的な負担など、さまざまな原因が複雑に絡み合って引き起こされます。
一般的に、睡眠に関しては質よりも時間がはるかに重要と考えられています。18〜64歳は7〜9時間、65歳以上は7〜8時間の睡眠時間が必要とされ、成人ではどの年齢層においても、健康の維持に少なくとも7時間の睡眠時間が必要になります3)。
以下に、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」に記載されている、良い睡眠をとるための環境や生活習慣を紹介します。
睡眠のための環境づくり

厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド 2023より作成
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html
睡眠のための生活習慣

厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド 2023より作成
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html
なお、カフェインやタバコ、お酒などの嗜好品は、摂取する量やタイミングを誤ると、寝つきが悪くなったり、夜中に何度も目が覚めてしまったりすることが多くなり、健康に悪影響を及ぼす場合があります。嗜好品を摂取する際は、以下の点に注意してください。
- 1日のカフェインの摂取量合計は400mg(コーヒー700cc程度)を超えないようにする。夕方以降は控えめに
- 晩酌は控えめにし、寝酒はしない
- 禁煙を目指す
睡眠障害が長引くと、QOL(生活の質)の低下やこころの病気につながってしまう可能性があります。また、がん患者さんは治療中だけでなく、治療が終わったあとも睡眠障害が続くこともあります。「よく眠れずに疲れが取れない」「夜中に起きてしまって十分に眠れていない」といった悩みを抱えている場合は、医師や看護師に相談しましょう。
参考情報
- 1) Besedovsky L, et al. Pflüg Arch - Eur J Physiol, 2012 Jan; 463(1):121–137.
- 2) Prather AA, et al. Sleep, 2015 Sep 1; 38(9):1353-1359.
- 3) 米国国立睡眠財団:How Much Sleep Do You Really Need?
https://www.thensf.org/how-many-hours-of-sleep-do-you-really-need/