お口のセルフケア
Qどのようなセルフケアを行うとよいですか?
お口のトラブル予防には、口の中を清潔に保つこと、乾燥を防ぐことが大切です。
がん治療の前に、担当の医師と相談のうえ、歯科を受診してお口のチェックとお手入れをしましょう。あらかじめ、がん治療中のトラブルにつながりそうな歯の治療や専門的なクリーニングを受け、口の中の環境を良好に整えることが大切です。また、治療中のセルフケアの方法についても指導を受けるとよいでしょう。

・清潔の維持
<ブラッシング(歯磨き)>
歯ブラシはヘッドの小さいものを選びましょう。鉛筆を持つように軽く持ち、歯と歯の間、歯と歯肉の境目にあてて軽い力で小刻みに動かして磨きましょう。歯磨きの回数は食後や就寝前、起床時など1日2~4回行うことが推奨されています。感染予防のためにも、歯ブラシは1ヵ月に1回程度交換するようにしましょう。
<粘膜の清掃>
舌や粘膜の表面でも口の中の細菌は増殖します。軟毛の粘膜ブラシやスポンジブラシで、口の中の奥から手前へ動かして清掃しましょう。ただし、口内炎などの痛みがある場合は、無理をしないようにしましょう。

<うがい>
食後や就寝前など1日4回以上、水または生理食塩水(体液とほぼ同じ濃度に調整した食塩水)でうがいをしましょう。生理食塩水は濃度約1%となるよう、小さじ1/2杯の食塩を、約250mLのぬるま湯に溶かして作ります。口の中に少量の水または生理食塩水を含み、ブクブクとうがいをしましょう。うがいは乾燥の予防にも有効ですが、アルコールを含有するものは粘膜への刺激が強く、口の中がより乾燥しやすくなるので使用を控えましょう。

<義歯(入れ歯)のお手入れ>
入れ歯のお手入れが行き届かず口の中が汚れていると、虫歯や歯周病、口臭の原因になるだけではなく、カンジダ症などの粘膜の感染症を引き起こすこともあります。また、これらの感染症は、痛みや不快感だけでなく、誤えん性肺炎などの合併症にもつながる可能性があります。
入れ歯は、毎食後や就寝前などにお手入れするようにしましょう。清掃は流水にあてながら、入れ歯用のブラシで丁寧に汚れやぬめりを取り除きます。その上で、夜間(就寝時)は原則としてはずし、入れ歯洗浄剤につけておきましょう。
・乾燥の予防
<保湿>
口の中が乾燥すると、入れ歯や傾いた歯などで口の粘膜が傷つきやすくなり、痛みも出やすくなります。さらに、口の中の細菌のバランスが崩れ、感染症が起きやすくなることもあります。マウスウォッシュタイプやスプレータイプなどの各種保湿剤の使用や、口の中を潤すためにこまめに水を含むなど保湿を心がけましょう。

<マッサージなど>
唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)のマッサージや、口の周囲の筋肉を刺激することにより、唾液の分泌を促すことができます。キシリトールガムを噛んだり、ノンシュガー飴をなめたりすることで、唾液腺を刺激することも効果的です。ただし、唾液腺のダメージが大きい場合はあまり効果が期待できないこともあります。また、寝ているときにマスクをつけることで睡眠中の口腔乾燥を防ぎ、起床時の乾燥感が和らぐこともあります。

?口腔乾燥
がんの治療によって唾液を作る細胞がダメージを受けると、唾液の分泌量が低下して口腔乾燥が生じます。
唾液には抗菌作用があり、口の中の細菌の増殖を防いでいます。そのため、唾液が不足して口が乾くと、虫歯や歯周病にかかりやすくなります。原因としては、抗がん剤などの薬剤、頭頸部(脳と目を除く首から上のすべての領域)の放射線療法の副作用のほか、ストレスや口呼吸などがあります。
軽度の場合は、口の中のネバネバ感や乾燥による違和感があります。歯垢や粘膜表面の付着物が増加していくと、口臭も強くなります。重度になると、舌表面のひび割れなども生じ、痛みで食事や会話に支障をきたします。口腔乾燥の状態を放置すると、口の中に多種多数存在する常在菌のバランスが崩れ、口腔感染症が起きやすくなります。
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?口腔感染症
がん治療の副作用で免疫機能が低下し、細菌や真菌、ウイルスなどが増殖して口の中に感染症が起こることがあります。口の中の痛みが急に強くなった場合は、何らかの感染が起こっている可能性があります。
がん治療の内容により、免疫機能が低下する「骨髄抑制」という副作用が起こることがあります。このような状態のときには、口の中の常在菌による感染が生じやすくなります。治療の副作用による吐き気やだるさなどで、普段通りのセルフケアが難しくなるようなときは注意しましょう。細菌に限らず、カンジダやヘルペスウイルスなどによる感染症も起こることがあります。
虫歯や歯周炎など、歯や歯肉にかかわる感染症の治療を行わないままがん治療を始めると、骨髄抑制の状態のときには、今まで症状がなくても急に痛みや腫れが起こることがあります。口腔感染症は痛みで食事がしづらくなるだけでなく、ときには全身の感染症に広がってしまうリスクもあるので、治療前からのお口のチェックと適切なセルフケアが大変重要です。
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