「薬剤耐性(AMR)」ってなに?

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最近よく耳にする「耐性菌(たいせいきん)」とは、抗菌薬(抗生物質)が効かなくなった細菌のことです。
薬剤耐性(AMR)問題とは、これまで治せていた病気が、薬が効かずに治りにくくなってしまう現象です。

なぜこんなことが起きるのでしょうか?

抗菌薬を必要のないときに使ったり、正しく使わなかったりすると、細菌がその環境に慣れてしまい、「この薬じゃもう効かないぞ」と、まるで進化するように“耐性”を身につけてしまうのです。

このような耐性菌が増えると、日常的な感染症でさえ、重症化したり、命に関わったりする時代が来るかもしれません。

抗菌薬が効かなくなると、どうなるの?

「ちょっとした風邪で薬が出る」「手術のときに予防的に使う」
そんなふうに、抗菌薬は私たちの医療の“当たり前”を支えてきました。

でも、その抗菌薬がもし効かなくなったら…?

医療水準が後退し、私たちの未来の医療が脅かされる可能性があります。

また世界では、すでに耐性菌によって年間127万人が命を落としているという推計もあり、これはがんや交通事故に匹敵する深刻な問題です。

薬剤耐性がもたらすサイレントパンデミック

家庭でできるAMR対策

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日常のちょっとした行動が、耐性菌を増やさないことにつながります。

抗菌薬は、出された分を最後まで飲みきる 症状がよくなっても自己判断でやめずに、決められた回数・日数を守ることが大切です。
服薬を忘れた場合は、次の服用時間まで十分な間があるときは気づいた時点で服用しましょう。もし次の服用時間が近い場合は、忘れた分を飛ばして、自己判断で2回分をまとめて飲むことは避けてください。

家族の薬をまわしたり、以前の薬を再び使わない 「前に同じ症状で飲んだから…」といって残った薬を使いまわすのはNG。
感染している菌や体の状態に合った薬を、医師が診察して処方しています。
特にお子さんや高齢の方は、体格や持病によっても薬の種類や量が異なるため、必ず医師の指示を守ることが大切です。

風邪の時は受診して医師の処方にしたがう 多くの風邪はウイルスが原因なので、抗菌薬は効きません。「薬を出してほしい」と思ってしまいがちですが、むやみに使うことが耐性菌を増やす原因に。
医師と相談しながら、必要なときに正しく使いましょう。

感染症治療の基礎知識

出典:厚生労働省「薬剤耐性(AMR)対策について」より当社作成

監修医師:中野 貴司 川崎医科大学 小児科学特任教授、日本小児科学会 小児科専門医・指導医、日本感染症学会 感染症専門医・指導医、ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター

かかったときの治療 薬剤耐性(AMR)と私たちのくらし