「風邪薬」って感染症に効くの?

風邪っぽいときに、薬局で風邪薬を買って様子を見ようか迷うこと、ありますよね。
でも、「風邪薬」と呼ばれるものの多くは、熱や咳、鼻水などをやわらげる「対症療法」です。
つらい症状をおさえて体が回復しやすくなるようサポートしてくれますが、感染症の原因となるウイルスや菌を直接倒すわけではありません。
悪化や感染拡大を防ぐためにも、自己判断せずに必要に応じて早めに医療機関を受診をすることが大切です。

また、せっかく受診しても「解熱薬しか出されなかった…」ということもありますよね。
それは「薬が足りない」わけではなく、医師が「このまま自然に回復できる」と判断しているケースが多いのです。

感染症の治療では、体に備わった免疫の力を活かすことも大事な治療のひとつ。
不安なときは、医師や薬剤師に遠慮なく相談してみてくださいね。

ウイルスや菌をやっつける薬

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感染症の原因となる病原体が、体の中で増えたり悪さをしたりするのを抑える働きをします。体の免疫がきちんと働けるように助ける、大切なサポート役です。

抗菌薬(抗生物質) 細菌による感染症(肺炎・扁桃炎・膀胱炎・中耳炎など)に使われます。ウイルスによる風邪やインフルエンザには通常使われません。
また、通常は「風邪」に抗菌薬は不要です。なぜなら、その多くはウイルスによるもので、抗菌薬が効かないからです。

抗菌薬での治療を勝手にやめたり、必要のない場面で使い続けると、薬が効かない“耐性菌”を生む原因になることもあります。自己判断で中断したり服用しないことが大切です。

薬剤耐性(AMR)と私たちのくらし

抗ウイルス薬 ウイルスによる感染症(インフルエンザや新型コロナ、ヘルペス、水ぼうそう、HIVなど)に使われます。
ウイルス感染は時間との勝負になることが多く、「発熱から◯時間以内に飲み始める」など医師の指示を守ることが大切です。

抗真菌薬(こうしんきんやく) カビによる感染症(水虫、カンジダ症など)に使われるお薬です。
体の中にカビが入ると、肺真菌症や食道カンジダ症など重症化することもあります。

抗結核薬(こうけっかくやく) 結核菌に特化したお薬です。
結核は今も日本で毎年1万人以上がかかっている「昔の病気ではない」感染症です。
治療は長期間にわたって継続する必要があり、複数の薬を組み合わせて使うのが一般的な方法です。
途中で自己中断すると、結核菌が耐性を持ち、再発や重症化のリスクがあります。

感染症の治療で大切なこと

感染症の治療において大切なのは、「どの薬を、どんなタイミングで、どのくらい使うか」が、症状や原因によって一人ひとり異なるということです。

たとえば抗菌薬は、「すべての細菌をまんべんなくやっつける万能薬」ではありません。
実際には、それぞれの薬が特定の種類の菌や体の部位に対して効果を発揮するように作られているため、自己判断で症状が軽くなったからといって途中でやめたり、余った薬をとっておいて再利用したりするのはNGです。

「体の力も引き出す」ことが大切 抗菌薬や抗ウイルス薬は、病原体そのものを完全に消すわけではありません。薬を飲んでいるからといって、無理をするのは禁物です。
最終的に体を回復させるのは、自分自身の免疫のはたらきが大きいです。その力を引き出すためには、日々の過ごし方がとても大切です。

  • 十分な睡眠
  • 水分補給
  • 消化のよい食事
  • 無理をせず、体をしっかり休めること

しっかり休んで体力を保つことも、治療の一部です。

「またかからないために」できること

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病院で処方された薬を飲んで症状が落ち着くと、「治ったからもう大丈夫」と安心してしまいがちですが、実は感染症の中には、繰り返しかかりやすいものや、重症化するリスクがあるものもあります。

特にお子さんや高齢の方は、免疫が未熟だったり弱くなっていたりして、再び感染する可能性が高いことも。

そんなときに役立つのが、「予防のための選択肢=ワクチン」です。
ワクチンは、健康なときに受けてこそ効果を発揮する“事前の備え”。「もう元気だけどまた同じようなことになりたくない」「次は家族全員でちゃんと備えておきたい」
そんな気持ちをもったときに、ワクチンという選択肢があることを、ぜひ思い出してみてください。

ワクチン(予防接種)の基礎知識

出典:厚生労働省「感染症情報」より当社作成

監修医師:中野 貴司 川崎医科大学 小児科学特任教授、日本小児科学会 小児科専門医・指導医、日本感染症学会 感染症専門医・指導医、ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター

感染しないために 感染症治療の基礎知識