ワクチンで備える

感染症予防の基礎知識~ワクチンの役割と考え方~

ワクチンの接種については、「接種すべきか」「子どもや親に勧めるべきか」迷うことも多いですよね。
ワクチンについて、不安と向き合いながら正しく判断するための知識と考え方をわかりやすく解説します。

「免疫」と「抗体」:体を守るしくみ

感染症のことを調べていると、「免疫」や「抗体」という言葉をよく見かけます。
これは私たちの体がウイルスや細菌とたたかうために、もともと持っている“体を守るしくみ”です。

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免疫=体を守るしくみ 免疫は、体にとって「異物」となるウイルスや細菌を見つけて、排除したり、広がるのを抑えたりするしくみのことです。
例えば風邪をひいたとき、熱が出たり、せきが出るのは、免疫がウイルスと戦っているサイン。一度かかった病気に「またかかりにくくなる」のは、免疫の記憶によるものです。

抗体=免疫の中で働く「ウイルスと戦う武器」 抗体は、免疫のしくみの一部として作られる、ウイルスや細菌にくっついて動きを止める“武器”のような物質です。
抗体は、病気にかかったあとや、ワクチンを受けたときに体の中で作られます。
抗体があると、その病気に対して再びかかりにくくなる、またはかかっても軽くすむ場合があります。

免疫を強く保つ生活のポイント 免疫は、毎日の生活習慣でも強くすることができます。

  • バランスのとれた食事
  • 十分な睡眠
  • 適度な運動
  • ストレスをためない

体の中でがんばってくれている免疫に、生活と行動で“味方”してあげることが大切です。

ワクチンの役割ってなに?

ワクチンを接種することで、ウイルスや細菌などに対する獲得免疫(抗体など)を前もって準備しておくことができます。

自然免疫 生まれつき体に備わっている「何か異物が来たら反応する」しくみ。

獲得免疫(抗体など) 「このウイルスは知っているぞ!」と素早く対応できるしくみ。妊娠中に受けたワクチンの抗体が、赤ちゃんにも移って守ってくれることもあります(母子免疫)

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ウイルスや細菌に感染したとしても、発症や重症化を防ぐことが、ワクチンのいちばんの目的です。

ただ、免疫は年齢や体調によっても違います。
赤ちゃんは、まだ免疫が未熟で、いろんな病気にかかりやすく、高齢の方は、免疫が弱くなっていて、重症化しやすいです。
そこで大切なのが、家族の中で「免疫のある人」が増えること。それが、いわゆる「家庭の中の集団免疫」です。

家庭内の“集団免疫” 集団免疫とは、周囲の人が病気にかかりにくい状態をつくることで、感染の広がりを防ぐ力のことです。
家族のほとんどがワクチンを接種して免疫を持っていれば、たとえ誰かが外でウイルスをもらってきても、家の中でそれ以上広がる可能性がぐんと下がります。

  • ・乳児や予防接種がまだのお子さんがいる
  • ・妊娠中の方や、高齢の親と一緒に住んでいる
  • ・持病があって重症化しやすい家族がいる
そんなご家庭では、 “自分の予防”が、実は“家族を守る力”にもなります。

ワクチンで防ぐことができる感染症

副反応は「免疫が働いている証拠」

ワクチンを接種したあと、接種した部分が腫れたり、痛みが出たり、発熱や頭痛などの「副反応」が起こることがあります。
これは、体が“獲得免疫(抗体など)”を作っているサインです。
ほとんどは1〜2日で落ち着く軽い症状で、水分補給や休息、解熱剤で対応できます。

ワクチン接種が原因かどうかは分からないけれども、接種後に起きた好ましくない体の変化のことを「有害事象」と言います。
すべてが副反応とは限りませんが、安全性を確認するために、たくさんの情報がしっかり集められており、重篤な有害事象の報告があった時は専門機関で因果関係を慎重に調べています。

健康上の問題が起こったら… 「これって副反応かな?」と不安に感じたら、まずは接種した医療機関やかかりつけ医に相談しましょう。
また、ワクチン接種による健康被害に対しては、予防接種法に基づく救済制度なども設けられています。

副反応についての相談(くすり相談窓口) 副反応と対処法(疾患別対応マニュアル) 副反応の報告(医薬品副作用報告) 定期接種の救済について(厚生労働省) 任意接種の救済について(PMDA)

接種を迷った時の考え方

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有効性とのバランスで考える ワクチンは100%感染や発症を防げるわけではありません。でもそれは、「ワクチンに意味がない」ということではないのです。
完璧に防げなくても、「症状を軽くする」「まわりに広げにくくする」ことは、とても大きな効果です。交通事故をゼロにできなくても、シートベルトやチャイルドシートをつけるのと同じ感覚です。
判断に迷ったら、「ワクチンを受けた場合の効果・副反応」だけでなく、「病気になったときの仕事や家事、育児への影響」「大切な家族への影響」も一緒に考えることが大切です。

ワクチンを打つかどうかに「絶対の正解」はありません。でも、信頼できる情報のもとで納得して選ぶことはできます。
もし「不安」の元にあるのが、「よくわからない」「判断材料が少ない」ことであれば、少し立ち止まって、ゆっくり調べて、家族や医師にも相談してみましょう。
大切なのは、“こわいからやめる”ではなく、“わかった上で選ぶ”こと。それが、自分や家族の健康に向き合う第一歩です。

ワクチンで防ぐことができる感染症

出典:厚生労働省「予防接種・ワクチン情報」より当社作成

監修医師:中野 貴司 川崎医科大学 小児科学特任教授、日本小児科学会 小児科専門医・指導医、日本感染症学会 感染症専門医・指導医、ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター

ワクチンで備える ワクチン(予防接種)の基礎知識~大切な人を守るために~