これって感染症?

感染症の基礎知識

身の回りで感染症が流行ると、「どこでうつった?」「何から始まった?」と悩むことも多いですよね。
まずは、感染症のしくみやうつり方、原因となる病原体の種類など、全体像を知っておくことが、落ち着いて対応する第一歩になるはずです。

そもそも感染症とは?

感染症とは、体の中にウイルスや細菌などの“病原体”が入り込んで、熱が出たり、せきが出たりと、体に不調を起こす病気のことです。
「風邪」や「インフルエンザ」「麻しん(はしか)」など、私たちがよく耳にする病気の多くがこの感染症にあたります。

病原体は、目には見えませんが、私たちの身の回りにたくさん存在しています。体に入っても元気でいられることもありますが、免疫力が落ちていたり、病原体が強力だったりすると発症してしまいます。

感染経路から見る主な感染症

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感染症は、「どこから病原体が体に入るか(=感染経路)」によって、いくつかのタイプに分かれます。
感染経路を知っておくことで、予防のポイントも見えてきます。

飛沫感染(ひまつかんせん) 病原体が、くしゃみやせき、会話などの際に小さなしぶき(飛沫)となって飛び、それを口や鼻から吸い込むことで感染します。
しぶきは1〜2メートルほど飛ぶので、近くにいる人にうつりやすいのが特徴です。

主な感染症の例

  • インフルエンザ
  • 新型コロナウイルス感染症
  • 風邪(ライノウイルスなどが原因)
  • RSウイルス感染症

接触感染(せっしょくかんせん) 病原体がついた手で、目・鼻・口をさわり体内に入ることで感染します。ドアノブやスイッチ、スマホなど、手が触れる場所にウイルスや細菌がついていることもあります。

主な感染症の例

  • ノロウイルス感染症
  • RSウイルス感染症
  • とびひ(黄色ブドウ球菌などが原因)
  • 咽頭結膜熱(アデノウイルスが原因で“プール熱”と呼称されることもあります、現在はプールで感染することは多くありません)

空気感染(くうきかんせん) 飛沫よりももっと小さな粒子(飛沫核)になった病原体が空気中を長くただよい、離れた場所にいる人にもうつるのが空気感染です。

主な感染症の例

  • 麻しん(はしか)
  • 水ぼうそう
  • 結核

経口感染(けいこうかんせん) 病原体がついた食べ物や水を口にすることで感染します。手についたウイルスが食品に移ったり、調理器具を通じてうつることもあります。

主な感染症の例

  • ノロウイルス感染症
  • O157などの腸管出血性大腸菌感染症
  • サルモネラ感染症

血液・体液感染/母子感染 病原体が血液や体液(よだれ、精液など)を通じて体に入ることで感染します。また、出産時や授乳、妊娠中の母子感染もあります。
通常の生活では感染しにくいものが多いですが、医療行為や性行為、出産・授乳時などに注意が必要です。

主な感染症の例

  • B型肝炎・C型肝炎
  • HIV(エイズ)
  • HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス)
  • 梅毒(ばいどく)

感染症ごとに「どこからうつるか」が違うため、それぞれに合った対策が必要です。
まずは、日々の手洗いや室内の換気など、日常から基本的な感染予防の習慣をつけることが、家族を守る第一歩です。

感染症予防の基礎知識

感染症の主な原因

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感染症は、「病原体(びょうげんたい)」と呼ばれる、体に悪さをする微生物が体の中に入ることで起こります。
主な原因となる病原体は、次のような種類があります。

ウイルス ウイルスは、とても小さくて、体の細胞に入り込んで増えるのが特徴です。抗菌薬(抗生物質)は効かず、ワクチンによる予防や自然に治るのを待つ治療が中心となります。一部のウイルス感染症に対しては、抗ウイルス薬による治療が可能です。

主な感染症の例

  • 風邪(かぜ)
  • インフルエンザ
  • 新型コロナウイルス感染症
  • ノロウイルス感染症
  • 麻しん(はしか)
  • 水ぼうそう
  • B型肝炎、C型肝炎 など

細菌(さいきん) 細菌は、ウイルスよりも大きく、栄養を取りながら自分で増えます。抗菌薬(抗生物質)が効くものが多いです。
抗菌薬による治療を行う際は、耐性菌対策も含めて、適正な使用が大切です。

主な感染症の例

  • 溶連菌感染症(ようれんきん)
  • 肺炎(はいえん)
  • 中耳炎
  • 尿路感染症
  • とびひ(伝染性膿痂疹)
  • 百日せき など

真菌(しんきん)/カビ 真菌とは、「カビ」の仲間です。湿気が多いと増えやすく、皮ふや口の中などに感染することがあります。

主な感染症の例

  • 水虫(みずむし)
  • カンジダ症
  • 白癬(体や頭にできるカビ) など

原虫(げんちゅう) 原虫は、水や食べ物を通じて感染することがあり、一部は海外での感染が多いです。動物や虫を介して広がることもあります。

主な感染症の例

  • アメーバ赤痢
  • マラリア
  • トキソプラズマ症 など

寄生虫(きせいちゅう) 寄生虫は、人や動物の体にすみついて栄養を取る生き物で、寄生虫の卵や幼虫が体に入ることで感染します。衛生環境や食べ物が関係することが多いです。

主な感染症の例

  • 回虫(かいちゅう)
  • エキノコックス症
  • アニサキス症 など

それぞれの病原体には、かかりやすい場面や、効く薬・効かない薬が異なります。
「何が原因で起きるのか?」を知っておくと、感染症の予防や治療につながります。

感染症治療の基礎知識

出典:厚生労働省「感染症とは」より当社作成

監修医師:中野 貴司 川崎医科大学 小児科学特任教授、日本小児科学会 小児科専門医・指導医、日本感染症学会 感染症専門医・指導医、ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター

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