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末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)について

監修
藤田医科大学病院 血液内科・化学療法科
教授 冨田 章裕 先生

末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)とは

「悪性リンパ腫」は、「白血球」の中の「リンパ球」が悪性化(がん化)した疾患です。リンパ球には、B細胞、T細胞、NK細胞などの種類があり、T細胞ががん化した病気を「T細胞リンパ腫」と呼びます。「末梢性T細胞リンパ腫(PTCL:peripheral T-cell lymphoma)」は、T細胞リンパ腫に含まれる一つの病型です。T細胞は「免疫」に関わる細胞で、ウイルスなどの病原体やがん細胞などの異物を攻撃するはたらきを持っています。

症状

特徴的な症状は、リンパ節の「腫れ」や「しこり」です(図)。腫れがわかりやすい場所は、首やわきの下、足の付け根などです。急速に腫れが大きくなっている時は痛みを伴うこともありますが、多くの場合は痛みはありません。また、胸やお腹の中にあるリンパ節が腫れている場合もありますが、体表から触れることができないため、大きくなるまで気がつかないこともあります。
それ以外の症状として、「発熱」や「だるさ」、「体重の減少」、大量の「寝汗」、「皮膚のかゆみ」などをともなう場合もあります。
また、悪性リンパ腫はリンパ節以外の臓器(節外臓器)に発生することもあり、発生する部位によりさまざまな症状があらわれます。

図 PTCLの主な症状

PTCLでは下記のリンパ節などに「腫れ」や「しこり」がみられます。

首のリンパ節 腹部のリンパ節 わきの下のリンパ節 胸部のリンパ節 足のつけ根のリンパ節 ひざの裏側のリンパ節

検査・診断

はじめに問診や触診をおこない、どこのリンパ節に、いつ頃から腫れがあるのか、腫れ以外の症状があるか、などを確認します。その後、血液検査や超音波検査、CTなどの画像検査などを行います。確定診断のためには、腫れているリンパ節や腫瘍の一部を採取して顕微鏡で調べる「リンパ節生検」が必要です。また、悪性リンパ腫であることが確定した場合は、病気の進行の程度を調べるために、FDG-PET検査、骨髄検査ほか、必要に応じて胃カメラや脳脊髄液検査などを行います。

分類

PTCLにはさまざまな種類(病型)があります。非特定型PTCL(PTCL-NOS)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、ALK陽性未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、ALK陰性ALCLの4病型が頻度の高いPTCL病型として知られています(表)。

表 PTCLの病型分類

PTCL-NOS

下のいずれの病型にも分類されない病型
T/NK細胞リンパ腫*全体の約26%を占める。

AITL

60歳前半の男性に多い。発熱、体重減少、皮膚症状などの全身症状があらわれることが多い。
T/NK細胞リンパ腫*全体の約19%を占める。

ALK陽性ALCL

ALK(アルク)タンパク質が発現しており、CD30とよばれる細胞表面マーカーが陽性の病型。ALK陰性例より若年の患者が多い。
T/NK細胞リンパ腫*全体の約7%を占める。

ALK陰性ALCL

ALKタンパク質の発現がなく、CD30が陽性の病型。45〜60歳に発症のピークがある。
T/NK細胞リンパ腫*全体の約6%を占める。

*T/NK細胞リンパ腫:白血球の中のリンパ球のうち、Tリンパ球又はNKリンパ球ががん化した悪性リンパ腫の病型

治療法

4病型のうち、予後が良好とされているALK陽性ALCLとそのほかの3病型の治療法は分けて考えられています。ALK陽性ALCLではCHOP療法とよばれる多剤併用化学療法が行われ、腫瘍が限られた部分に残っている場合には放射線療法が追加されることがあります。
他の3病型に関しても多剤併用化学療法が行われますが、標準治療は確立されておらず臨床試験への参加も選択肢の一つです。初回治療の結果が思わしくなかった場合の治療法についても現在さまざまな臨床試験が実施されており、複数の治療薬が開発されています。CD30陽性の病型ではCD30をターゲットとした「分子標的治療薬」が使われることがあります。

経過・予後

PTCLは、月単位で病状が進行する「アグレッシブリンパ腫」に該当するため、診断がついた時点で早期に治療を開始する必要があります。

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