《一般生活者600名の「社会不安障害(SAD)」に関する認識調査より》約7人に1人が「社会不安障害(SAD)」の可能性~「SAD」について「病気の内容まで知っている」のはわずか“5.5%”~

2006年02月02日 プレスリリース

アステラス製薬株式会社(本社:東京都中央区、社長:竹中登一)、ソルベイ製薬株式会社(本社:東京都北区、社長:大岩幸治)、明治製菓株式会社(本社:東京都中央区、社長:佐藤尚忠)の3社は、2005年10月、全国の10代後半~40代の一般生活者の男女600名を対象に、インターネットによる「社会不安障害(Social Anxiety Disorder/以下、SAD)に関する認識調査」を実施しました。この調査は、一般生活者の中に、SADの可能性のある方がどの程度存在しているのかを明らかにする目的で実施され、主に次の4点が明らかになりました。

  • 詳細な調査結果は後述しておりますので、そちらもご参照ください。
  • 本調査は、上記3社が、調査設計から結果集計までを、広報代理店である株式会社トークスに外部委託して実施したものです。

(1)「SAD」の症状を自覚している人が8.0%

「人前で話をする・食事をする・字を書くなど」の状況であてはまるものを、SADの病気の内容を説明せずに、診断基準の質問項目を用いてたずねたところ(※)、「人から注目されると怖くなったり、とまどったりする」が46.1%(283人/614人)、また「その恐怖やとまどい」で「仕事や社会生活が妨げられたり、苦痛を感じたりする」と回答した人が8.0%(49人/614人)いました。【グラフ1】

この質問は、SADの診断基準であるDSM-IVを平易な言葉に改変して作成したものであり、SADかどうかの診断を下すものではありません。

(2)約7人に1人が「SAD」の可能性

(1)とは別に、SADの病気の内容について説明し、その症状があてはまるかどうかをたずねた質問では、「自分にあてはまると思う」と回答した人が 13.4%(82人/614人)と、SADの可能性を有する人が約7人に1人の割合でいることがわかりました。この結果は、病態を理解してもらうことが、患者の顕在化につながる可能性があることを示唆しています。【グラフ2】

(3)「SAD」について「病気の内容まで知っている」のは5.5%

SADについて「病気の内容まで知っている」と回答したのは、全体のうち5.5%(34人/614人)と、SADの病態への認知度はかなり低いことが明らかになりました。【グラフ3-2】

(4)仕事や社会生活が妨げられても、受診しない傾向

(1)で「仕事や社会生活が妨げられたり、苦痛を感じたりする」と回答した49人のうち、“汗をかく”、“顔が赤くほてる”、“手足、全身、声の震え”などの「身体症状がある」と回答した43名に「受診の有無」を調べたところ、74.4%(32人/43人)が「受診しない」と回答しました。【表1-1】

本調査結果に対する専門医のコメント

今回の調査結果について、医療法人和楽会横浜クリニック院長の山田和夫先生は、『人から注目されることで恐怖やとまどいを感じ、「仕事や社会生活が妨げられたり、苦痛を感じたりする」と回答した、SADの症状が疑われる方が8.0%いましたが、ここで設定された「人前で話をする・食事をする・字を書く」といった状況は、実際の患者さんが恐怖に感じる状況の一部分でしかなく、実際には、電話をかける、自分より目上の人に紹介される、来客を迎える、など他にも様々な状況が考えられます。つまり、具体的な状況の例が増えれば、該当すると答える方も増えてくる可能性があります。

一方、SADの“病態を理解”した上で、SADが「自分にあてはまる」と考えた方が13.4%いました。このことは、SADを知ることで、患者の疑いのある方が顕在化したとも考えられます。事実、病態への認知度は5.5%しかなく、「受診しない」傾向が高かったのも、SADが病気だということをよく知らないためだと考えられます。

現在は、抗うつ薬である「マレイン酸フルボキサミン」がSADの治療薬としても承認されていることもあり、今後は、より多くの方たちに「SAD」という病気に対する認知と理解を深めていただき、その上で「SADに該当するかもしれない」と感じた方は、専門医に相談をしていただくことが必要ではないかと考えます』と述べています。

社会不安障害(SAD)とは

人前に出て、話す、食べる、書く等を行う際に、「笑われたらどうしよう」などといった「強い不安」や「恐怖」を感じてしまい、身体症状が現れることなどで、日常生活や仕事などに支障をきたす病気です。恥ずかしがりの性格であれば、同じ状況を何度もこなすことで「慣れて」きますが、「SAD」の場合は慣れて平気になるということはありません。顔が赤くなることが恥ずかしくて、人前に出ることがためらわれる、それがいつまでたっても治らない、このような場合は「SAD」の可能性があります。赤面症、あがり症、対人恐怖症などに近い症状を示しますが、これらは「SAD」とは区別されています。

調査結果

調査概要

●調査タイトル:
「社会不安障害(SAD)」に関する一般認識調査
●調査概要:
全国・男女(10代後半~40代)を対象にした「社会不安障害(SAD)に関する認識調査
●実施時期:
2005年10月
●サンプル属性:
全国/男女/614名
●調査方法:
インターネットによる調査

(1)SADの症状を自覚している人が8.0%

SADの患者が恐怖を感じる「人前で話をする・食事をする・字を書く、など」の状況であてはまるものを、SADの病気の内容を説明せずに、診断基準の質問項目を用いてたずねたところ(※)、「人から注目されると怖くなったり、とまどったりする」と回答した人が半数弱の46.1%(283人/614人)おり、また、「人から注目されることで感じる恐怖やとまどい」によって「仕事や社会生活が妨げられたり、苦痛を感じたりする」と回答した人が8.0%(49 人/614人)いました。社会生活が妨げられ、苦痛を感じるという症状はSAD患者に顕著にみられる症状で、このことから、一般生活者の中にも、SADの症状を自覚している人が約1割弱いることが明らかになりました。【グラフ1】

この質問は、SADの診断基準であるDSM-Ⅳを平易な言葉に改変して作成したものであり、SADかどうかの診断を下すものではありません。

【グラフ1】以下の項目の中で、「人前で話をする・食事をする・字を書くなどのとき」のあなたにあてはまるものはありますか? あてはまるものをすべてお答えください。

(2)約7人に1人が「SAD」の可能性

SADの病気の内容について説明し、その症状があてはまるかどうかをたずねた質問では、「自分にあてはまると思う」と回答した人が13.4%(82人/614人)と、SADの可能性を有する人が約7人に1人の割合でいることがわかりました。【グラフ2】

この調査結果は、SADの病態について具体的な説明をしない場合よりも、具体的な説明をして、病態を理解してもらうことの方が、患者の顕在化につながる可能性があることを示唆しています。

【グラフ2】以下は社会不安障害(SAD)の説明です。この説明を読んで、あなたやあなたの家族や周囲にあてはまると思われる方はいますか?(いくつでも)

社会不安障害(SAD)の説明

「社会不安障害(SAD)」は、人前に出て、話す、食べる、書く等を行う際に、「笑われたらどうしよう」といった「強い不安」や「恐怖」を感じてしまい、身体症状が現れることなどで、日常生活や仕事などに支障をきたす病気です。恥ずかしがりの性格であれば、同じ状況を何度もこなすことで「慣れて」きますが、「SAD」の場合は慣れて平気になるということはありません。顔が赤くなることが恥ずかしくて、人前に出ることがためらわれる。それがいつまでたっても治らない・・・。このような場合は「SAD」の可能性があります。赤面症、あがり症、対人恐怖症などに近い症状を示しますが、これらは「SAD」とは区別されています。

(3)「SAD」について「病気の内容まで知っている」のは5.5%

うつ病などを含めた精神疾患の中で、「名前だけは聞いたことがあるというものも含め、知っている病気」への質問(複数回答)で、「SAD」を回答したのは24.6%(151人/614人)と、「うつ病」の94.8%(582人/614人)や、「パニック障害」の80.0%(491人/614人)に比べて、その認知度は低いことがわかりました。【グラフ3-1】

また、上記質問で「SAD」を知っていると回答した151人のうち、「病気の内容まで知っている」かどうかの認知程度割合を調べたところ、151人/614人とした場合、「聞いたことがあり、病気の内容まで知っている」は5.5%(34人/614人)、「SADという言葉は聞いたことがあるが、内容まで知らない」は19.0%(117人/614人)と、SADの病態への認知度はかなり低いことが明らかになりました。【グラフ3-2】

(4)仕事や社会生活が妨げられても、受診しない傾向

また、(1)で「人から注目されることで感じる恐怖やとまどい」により「仕事や社会生活が妨げられたり、苦痛を感じたりする」と回答した8.0%(49 人)のうち、“汗をかく”、“顔が赤くほてる”、“手足、全身、声の震え”などの「身体症状がある」と回答した43名に「受診の有無」を調べたところ、「受診しない」と回答した人が74.4%(32人/43人)いました。【表1-1】

さらに、「受診しない」と回答した32人の「理由」を抽出した結果、「病気だとは考えていないから」が53.1%(17人/32人)、次いで「性格の問題だとあきらめているから」が46.9%(15人/32人)と、この2点が大きな理由となっており、仮にSADの可能性があったとしても、病医院などを受診しない傾向があることがわかりました。【表1-2】

【表1-1】「人前で話をする・食事をする・字を書く、などのとき」にあてはまるものとして、「仕事や社会生活が妨げられたり、苦痛を感じたりする」と回答した49名のうち、「身体症状がある」と回答した43名の、「身体症状が出たときの受診の有無」の内訳。

【表1-2】「人前で話をする・食事をする・字を書く、などのとき」にあてはまるものとして、「仕事や社会生活が妨げられたり、苦痛を感じたり」し、かつ「身体症状がある」と回答した43名のうち、「受診しない」と回答した32名の内訳。

以上