麻布大学における薬剤耐性菌研究のための寄附講座「AMR Surveillance Laboratory」の開設に関するお知らせ

2021年12月14日 プレスリリース

明治ホールディングスの医薬品セグメント事業会社であるMeiji Seika ファルマ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:小林大吉郎、以下Meiji)と麻布大学(所在地:神奈川県相模原市、理事長:小倉弘明、学長:川上泰)は、このたび、産業動物における薬剤耐性(AMR)に関する研究を目的とした寄附講座「AMR Surveillance Laboratory」(寄附講座教員:獣医学部獣医学科教授 河合一洋、以下AMRSL)を開設しましたのでお知らせします。AMRSLは同学獣医学部に設置され、現在医療現場と獣医療現場で問題となっている薬剤耐性菌について、産業動物の疾病および飼育環境を中心に調査を実施し、基礎データの蓄積による獣医療への貢献と薬剤耐性抑制のための手法について模索し成果を社会に還元します。(詳細はをご参照下さい。)

薬剤耐性(AMR)が関与する感染症は、すでに年間70万人の生命を奪っており、世界的な協調行動がなければ2050年までに年間1000万人に達すると言われ、その経済コストは100兆米ドルに及ぶと予測されています1),2)。また、動物から人へ、人から動物へ伝播可能な感染症(人獣共通感染症)は、全ての感染症のうち約半数を占めており、医療・獣医療の現場に従事する方々だけでなく、環境や食品を通じて一般社会へ容易に侵入し、国際的に伝播します。これらの問題については、医師および獣医師等が各々の職域で活動するだけでなく、分野横断的に、人・動物・環境の衛生に関わる方々が連携して取り組む必要があります。現在、このOne Health Approach(ワンヘルス・アプローチ)という考え方が再認識される社会情勢となっており、獣医療領域における抗菌薬の慎重使用も、薬剤耐性菌の世界的な広がりへの対策として不可欠であるとされています。

Meijiは、1946年にペニシリンの製造を開始して以来、医療用および動物用の抗菌薬を開発・上市するとともに、適正使用・慎重使用の推進や啓発、新たな耐性菌に対する薬剤の開発などに取り組んできました。このたび、これらに加えてAMRSLを開設することについて、Meijiは以下の意義を考えています。

  1. 産学連携の強みを活かしOne Health Approachを通じた薬剤耐性菌問題解決への貢献(SDGs 3)
  2. 産業動物の健康増進、環境保全による安全・安心な畜産物生産への貢献(SDGs 2,12,15)
  3. 寄附講座主催セミナーによる大学生・社会人への薬剤耐性菌問題の提起・啓発等教育活動充実への貢献(SDGs 4)

明治ホールディングスの医薬品セグメントは、2023年度を最終年度とする中期経営計画における「事業ポートフォリオ再構築」の一環として、感染症領域へ経営資源を集中し、国内外においてワクチンと抗菌薬のトップサプライヤーを目指します。感染症領域を中心とした製品の提供を通じ、ヒトと動物の健康を守るワンヘルス・アプローチを推進することで人々の健康を守るとともに、安心安全な畜水産物の安定供給や生産性の向上、コンパニオンアニマルとの共同生活による生活の質(QOL)や心の豊かさの向上を通じて、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献します。

以上

  • 1):Antimicrobial Resistance: Tackling a crisis for health and wealth of nations. UK, December 2014
  • 2):Tackling Drug-resistant Infections Globally: Final Report and Recommendations. UK Government, May 2016

参考

麻布大学について

麻布大学は、獣医系大学として二番目に長い歴史を持つ大学で、2025年に学園創立135周年を迎えます。動物学分野の研究に重点を置く私立大学として、トップクラスの実績を基盤に新たな人材育成に積極的に取り組んでいます。
同学は、獣医学部(獣医学科、動物応用科学科)と生命・環境科学部(臨床検査技術学科、食品生命科学科、環境科学科)の2学部5学科と大学院(獣医学研究科と環境保健学研究科)の教育体制に、学部生:2,411名、大学院生:88名が学んでいます(2021年5月1日現在)。1つのキャンパス内(神奈川県相模原市)で、人・動物・環境に関する教育・研究を実施している国内唯一の大学です。
麻布大学の概要: