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移植前の準備

移植前検査

造血幹細胞移植では、移植前処置の大量化学療法や放射線治療によって、患者さんはがん細胞だけでなく健康な細胞も含めて全身に大きなダメージを受けます。安全に移植が行われ、移植後の身体の負担を軽減するためにも、各種検査によって移植前後の全身状態を確認することは大切です。

検査の一例

血液検査: 輸血のための血液型やHLA型を確認します。また、赤血球、白血球、血小板の値や異常な血球がないか、血糖値や腎臓・肝臓の異常、感染症がないかなどを確認します。

骨髄検査: 原疾患(白血病などの血液の病気)の状態を評価するために行います。

尿検査: 腎臓や肝臓、胆道などに異常がないか、尿路感染症や膀胱炎の兆候がないか確認します。

心電図、心エコー検査: 循環器機能に異常がないか確認します。

腹部エコー: 消化器機能に異常がないか確認します。

呼吸機能検査: 呼吸器機能に異常がないか確認します。

胸腹部レントゲン/CT撮影: 呼吸器・消化器・循環器機能に異常がないか確認します。

副鼻腔CT: 副鼻腔炎がないか確認します。

歯科・口腔外科の受診

虫歯や歯周病、口内炎などの異常がないか確認します。虫歯などがあれば移植前に治療します。また、口の中を清潔に保てるよう歯石を除去したり、副作用のリスクを減らすため、移植前から移植後までのお口のケアを指導したりします。

外科(肛門科)の受診

痔核や肛門まわりに腫瘍などがないか確認します。

妊孕性の温存について(婦人科、泌尿器科への受診)

移植前処置の化学療法や放射線療法の影響によって卵巣や精巣がダメージを受けると、不妊の原因となる可能性があります。将来的に子どもを望む患者さんの場合は、治療前に卵子や精子を取り出し凍結保存が可能な場合があります。場合によっては、パートナーとの受精卵を凍結保存します。
特に卵子の採取はタイミングの問題もあり難しいケースが多いため、原疾患の治療早期から不妊治療の専門医も含めて相談していくことが勧められています。

移植細胞の準備

移植の種類・方法を決める

患者さんに適した移植方法を選定します。医師をはじめとする医療チームが治療の詳細をメリット、デメリットも含めて分かりやすく説明し、患者さんやご家族の意思を尊重しながら、最善・最適な治療法を選択できるよう支援します。非血縁者ドナーさんからの造血幹細胞の提供を希望する場合は、担当医や造血細胞移植コーディネーター(HCTC)を通じて骨髄バンクや公的さい帯血バンクへ依頼します。

造血幹細胞を取り出す

移植前処置を実施する前に、自家造血幹細胞移植の場合は患者さん自身の末梢の血管から、同種造血幹細胞移植の場合はドナーさんの骨髄や末梢の血管から、造血幹細胞を取り出します。骨髄移植の場合、全身麻酔下でドナーさんの腰の骨から専用の注射器を使って造血幹細胞を含む骨髄液を採取します。末梢血幹細胞移植の場合、G-CSFを3~4日間注射した後、末梢の静脈から採血を行い、取り出した血液を血球分離装置にかけて造血幹細胞を多く含む血球成分を分離します。骨髄、末梢血いずれの場合も、ドナーさんは数日間入院することになります。
さい帯血移植の場合は、公的さい帯血バンクで凍結保存・管理されている造血幹細胞を取り寄せます。

中心静脈カテーテルの挿入

患者さんの首や鎖骨の下、上腕、足の付け根にある太い静脈に点滴用の針を留置します。
移植治療前後は大量の抗がん剤や抗菌薬などを繰り返し投与し、輸血を行う機会が多くあります。また、食事がとれなくなる場合もあるため、高カロリーの輸液を行い栄養の補充を行います。中心静脈カテーテルを挿入することで、その都度 針を差し替える必要がなく、抗がん剤などが血管外に漏れて周囲の組織に炎症や壊死を引き起こすリスクを下げるため、治療中の患者さんの負担を減らすことができます。

リハビリテーションの計画

移植前処置(化学療法や放射線療法など)や副作用によって、体力・筋力が低下したり、長期入院によって関節の拘縮(こわばり、固くなること)がおこりやすくなったりします。そのため、移植前から理学療法士とともにリハビリテーションの計画を立て、体力の温存や早期回復によって移植後の生活の質を向上させることを目指します。

参考:

一般社団法人日本造血・免疫細胞療法学会(2024年5月1日アクセス)
https://www.jstct.or.jp/modules/patient/index.php?content_id=11

国立がん研究センター:がん情報サービス(2024年5月1日アクセス)
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/HSCT/hsct02.html#anchor2

公益財団法人日本骨髄バンク チャンス-ドナー登録のしおり- 1(2024年5月1日アクセス)
https://www.jmdp.or.jp/reg/guidebook/01.html